第16章 第3部 Ⅱ ※R-18
「目が覚めたか?」
ふいに意識が覚醒した。朝、なのだろうか?
「朝……?」
まだ布団にすっぽりとくるまれたまま、アヴェンジャーと話をする。アヴェンジャーは、窓辺に腰掛け、仄明るくなってきた空を眺めていた。
「あぁ。朝だ。」
上半身を起こして、キョロキョロと辺りを見回す。どうやら、夢の類ではないらしい。寝て起きても、同じ場所にいるのだから。
「ここは、どこなの……?」
朝の挨拶も無しに、疑問だけを、率直に口にした。
「恐らく、お前は今精神だけが囚われている状況だ。」
「それって……。」
「あぁ。かの魔術王が俺を利用し、お前をイフの塔へと閉じ込めた時と、同じ現象だろう。」
「出られるの?」
「原理的にはな。」
「原理的には?」
どういうことなのか分からず、アヴェンジャーの言葉をそのまま繰り返して口に出す。
「そのままの意味だ。此処が、何者かによって意図的に作り出された世界であろうと、数多ある並行世界であろうと、こうして我々が入り込めた以上、脱することも可能だと言うだけの話だ。まぁ、入り口と出口が同じ扉とは限らんが。見たところ、お前は、何者かによって、精神……、魂のみを引き摺り込まれたようだな。つくづく、お前はこういったことに因縁がある。」
そう言って、アヴェンジャーは呆れたように息を吐いた。アヴェンジャーと初めて共に戦ったのも、そういった空間だったことを思い出す。でも、今は思い出に浸っている場合ではない。
「この世界は、どういう世界なの……?」
「それは、俺にも分かりかねる。今後、調べるしかあるまいよ。この世界がどういったものか、作為的に作り出された世界ならば誰が何の意図で作り出したものか、俺には全く分からん。」
そう言って、アヴェンジャーは、長い睫毛を伏せた。……ん? ちょっと待って。それじゃあ、アヴェンジャーは、どうやってこの世界へと入って来た……?
「アヴェンジャーは、どうやってここへ……?」
「…………。」
アヴェンジャーは、口を閉ざしてしまった。何か、まずいことを尋ねてしまっただろうか?
「アヴェンジャー……?」
「……いや。ただの偶然だ。お前が気にすることでもない。それよりも、現状を確認した上で、今後の予定を決めるべきではないか? マスター。」
「あ、うん……。」