第12章 第2部 Ⅱ
「はい。天草四郎時貞、マスターの決定には従いますとも。」
「マスターちゃんならそう言うだろうって思ってたけど。」
天草とジャンヌは、当然のように、そう口にした。
「な、マスター……?」
エドモンだけは、信じられない、とでも言いたそうにしている。
『危険は伴うし、何の見返りも無い調査になるだろうけど、いいの?』
そう言いつつも、ダ・ヴィンチちゃんは私の決定に反対するような口ぶりではない。むしろ、この答えを分かっていたかのようだ。
『それでこそ、センパイです。私も、ここから出来ることをさせていただきますね。』
マシュも、穏やかな声でそう言った。
「だが……!」
エドモンがそう言いかけたところに、天草とジャンヌが口を開いた。
「おや。マスターの決定に何か不満が?」
「んじゃ、コイツ放っておいて行きましょうか、マスターちゃん。」
……何だか、天草とジャンヌは楽しんでいるように、見えなくもない。
「こんな惨状を見て見ぬふりなんて、出来ないよ。それに、乗り掛かった船だし!」
言いかけたところで、その昔エドモン・ダンテスはマルセイユの船乗りだったことを思い出す。あ、別に、狙ったわけじゃないんだけど……。
「……まぁ、とにかく、もう少し案内役をお願い!」
「……承知した。」
エドモンは短く返事をして、すぐさま私に背を向けた。けれど、その一瞬、エドモンの口元が緩んでいた気がする。
『3階に、今までよりも強い反応があるから、気を付けてね。』
ダ・ヴィンチちゃんの忠告を聞きながら、私たちは3階へと急いだ。