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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第12章 第2部 Ⅱ



 2階にも、相変わらず独房が並んでいる。ただ、1階と比べて違うのは、むせかえるほどの生臭さが立ちこめているということだ。もっと具体的に言えば、血生臭い。

「先程、看守たちが死体を運んでいったな? ということは、俺たちには幸運と言える。」
 エドモンが、小さな声で呟いた。
「あぁ、成る程。」
 私にはよく分からないが、天草は頷いている。
「看守たちが死体の運搬やその処理をしている間は、これより上階の看守の人数は減る。つまり、我々が見つかるリスクも低い状態になる、ということですね?」
「その通り。」
「……。」
 それは何とも、難しい感情を湧き起こさせる話だ。顔も知らない他人が死んだことで、こちらが利益を受けるなんて、あまり気持ちの良い話ではない。こういったとき、どういう反応をすればいいのか、正直分からない。私が反応に困っていると、天草がこちらを見て、にこりと微笑んだ。
「難しく考える必要はありません。マスターは、そのままでいいんですよ。」
 天草は普段から、他人と一定の距離を取りたがるし、発言内容だって裏を臭わせるような意味深なものも多い。でも、今の発言は他意の無い、彼からの素朴な言葉のような気がした。
「あ、ありがとう、天草……。」
 私が礼を言うと、天草はどことなく満足そうな顔を浮かべた。

 どこからか、パァン、パアンと乾いた音が聞こえてきた。この場所は音が反響して分かりにくいのだが、近い場所が、音の発生源だろう。何とか意識を集中させ、音のしている方向へと移動する。やがて、男2人の声が聞こえ始めた。どうやら、こちらで間違いないらしい。身を潜めて、音の発生源である独房内部を窺う。
 そこでは、1人の男性看守が、囚人であるらしい男性を、鞭で打っていた。ここからではよく見えないが、鞭で打たれている側の男性が抵抗している様子は無い。というか、これほどまでに鞭で乱打されていれば、抵抗することなどできないだろう。それほどまでに、鞭での打擲(ちょうちゃく)は激しいものだった。

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