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恩讐の花嫁 【Fate/GO 巌窟王 夢小説】

第9章 希望


***


 正面に、エドモンの姿。出発前と変わらないように見える、その姿。
 ばっちりと、目が、合ってしまった。

 お互い、何も言わない時間が流れる。
 ああ、あんなにもいっぱい、エドモンに言うための言葉を考えていたのに。
 何か言わないと―――――。


「……っ。」
 あぁ、ダメだな。あんなにもいっぱい、考えてたのに。エドモンの顔を見たら。そんな言葉は全部、涙になってしまった。
 でも、私はこうしてまた、エドモンに導かれ、生かされている。だから、また逢えた。一緒にいられる。その事実に、この涙は、乾いて。

 私から、とめどなく溢れてくる、この感情。
 小さな私には、この感情をおしとどめられそうにない。それどころか、この感情の名前さえも、わからない。それでも、エドモンに対するこの感情は、大きな波になって押し寄せてくる。
 この感情は、どうしたら言葉することができるのか。
 この感情は、どうしたら相手に伝えられるのか。

―――――答えなんて、きっと、無い。


 だから、せめて、手を伸ばす。

「おかえりなさい、エドモン。」
 私からやっと出てきた言葉は、たったこれだけ。

「ただいま、立香。」
 それでも、穏やかな顔で、エドモンはこたえてくれた。
 ふわりと抱え上げられる、私のからだ。


 確かに感じる、エドモンの温度、感触、匂い。
 感じている。確かに、触れることができる。
 あぁ、わたし。生きてるんだ。 ここに、生きてるんだ。
 エドモンに触れて、その事実をようやく実感している。
 エドモンが、私と共に在ってくれる――――――その事実が、この上なく嬉しい。
 エドモンと、これからも一緒にいられる―――――その未来が、この上なく愛おしい。
 でも、それが言葉にできない。それでも、伝えたい。 私はもう――――いっぱい、いっぱい。


「――――――。」

 何も言えずに、私から、エドモンへ。
 唇を、重ねた。

 自分でも、随分とぎこちない行為だと思う。
「……。」
 それでも、エドモンは私の拙いキスに、応えてくれた。

「……っ……。」
 唇を離す。それはひどく、名残惜しかったけれど。

 エドモンの金色の瞳に、私が映っている。それが、嬉しくて。
 エドモンと再び目が合い、笑い合う。
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