第1章 〖 青葉城西 〗赤い薔薇 〖 及川徹 〗
「ん?なに?シたいの?」
まあ、でしょうね。
キラキラした目で見てくる。
多分徹は欲求不満でそろそろシたい頃だったんだろう
別に私も嫌ではない。
『あー、後でね、それよりさ、トス上げてよ。』
いいでしょ、とボールを渡してスタンバイする。
「はいはい、香は我儘だなあ?」
どっちがよ。
とか思いながらも言葉を飲み込む
準備は万端。
徹が、指の先まで神経を通して、華麗に、可憐に
トスをする。
私はその前から助走をつけて走り出し跳び上がる、
そして徹がボールから手を離すコンマ1秒後、ドンピシャで手にぶち当たり、撃ち落とす。
やっぱりこいつは天才セッターだ。
ふう、と息をつけば、徹がドヤッ、とした顔をして
「ど?俺のトス。」
相も変わらず誇らしげの様子。
『最っ高。』
珍しく貶さずに褒めてやる。
そうしたら、徹は目を見開いて決まってこういう
「機嫌いいね、今日。」
機嫌いいね、これが私への合言葉。
そして私は決まってこう返す。
『徹がいるからね、』