第3章 また生きる事
部屋から少し歩いて、ちょうど松明と月の光で明るい場所に出るとミカサが予め用意していたと思われるハサミを取り出して差し出した。
髪を切る為には些か大きなものだったけど、まぁ、切れるならテクニック次第でどうにかなるだろう。
『さっき、全然話してなかったけど、ミカサは何で訓練兵になったの?』
ハサミを止める事なくミカサに投げた質問。
サラサラしたミカサの髪は、月明かりに輝いて遠目で見るより更に綺麗に見えた。
「……家族を死なせない為に来た。側にいないと守れないから。」
そんな事をサラリと口にするミカサは、今どんな顔をしているんだろう。
こう想われている本人はとても幸せ者だろうな。
私は人に疎まれた事はあっても、想われた事は一度としてないから……
『大切な人なんだね。誰かをそんな風に大事に想ったり、誰かの為に必死になれる事って、凄いと思う。』
ポツリ。
呟く。
羨ましいと思った。
誰かの為に生きるミカサも。
そして、ミカサにそう思わせる相手も。
「ミサキに大切な人はいないの?」
『……いない、かな。』
一人で生きて来たから……
私はずっと……
一人ぼっちだったから……
「家族は?」
『ッ……!!?』
ミカサの言葉にビクリと反応する身体。
ドクドクとイヤな音を立てて早くなる心臓
記憶が……
フラッシュバックする。