第3章 また生きる事
普通すぎた私の反応。
ハンナは「なーんだ。」と、少しだけつまらなさそうに溜息を吐き、再びミーナに顔を向ける。
ジャンの話しはそれっきり終わり、明日の適正試験の話しに戻った。
どうやらミーナは教官達が話しているところを通りがかって小耳に挟んだらしい。
立体起動装置と言うものがどういうものか分からないけど、それに受からない場合、この世界に戸籍がない私は、これから先の事、どうなってしまうのか分からなくて、少しだけ怖い。
こんなにも生にしがみ付いて、私は一体、どうしてしまったんだろう。
自分の知っている世界じゃないからの興味……?
でも、それとはまた違う気がする。
ハンナとミーナが話す中、隣にいたミカサが用事があるから部屋を出るとの事だったので私もそれに続いた。
あまりまだ上手く喋れないから、口数が少ないミカサの近くの方が居心地が良い。
『誰かに会いに行くの?』
もう外は暗くなっている。
こんな時間にトイレ以外だったらそんな事しか考えられなかったのだけど、返って来た返事は想像していたものと違った。
「髪がちょっと長すぎると言われたから、切ろうと思って。」
月の光を反射してキラキラ光るミカサの綺麗な黒髪。
私は元々の色素が薄いから、少し羨ましい。
『そんな綺麗な髪、切っちゃうの?勿体無いから結んじゃえばいいのに。』
私が投げ掛けた言葉に、ミカサは静かに首を振った。
『んー、それなら私が切ってあげようか?後ろとか一人だと見えないし、切りにくいでしょ?私、手先器用なの。』
自分で言うのもおかしな話しだけど、昔から細かい作業をする事には結構自信がある。
家庭が家庭だった為、お小遣いなんてなかったので、髪も、長くなり過ぎたら自分で切っていた。
「いいの?」
驚いた表情をしているミカサに対し、私は笑って了承した。