第3章 また生きる事
助けてもらったと言う表現に少し疑問が残るけど、他に言葉が思い浮かばない。
「へぇー。あの人が?夕食の時はすっごい感じ悪かったけど。ねぇ、ハンナ。」
「え?あ、あぁ、うん。」
感じが悪いと周りに印象付けたジャンは、夕食の時に何をしでかしたんだろうか。
優しく笑うジャンを思い出して疑問が浮かぶ。
『ジャンは……悪い人ではないと思うよ。多分だけど、ね。私もあんまり知りはしないんだけど、悪い人だったら私の事なんて助けたりしないだろうし。』
そう。
悪い人だったら、私の先の事まで考えないのではないだろうか。
庇ってやる、なんて言わないんじゃないかな。
そんな私の答えに、ハンナが「あっ!」と手を叩く。
「もしかしてミサキって、ジャンの事好きになっちゃったの?」
少し笑みを浮かべられて聞いてくるハンナ。
……好き?
あまり言葉の意味が理解できない。
私が、ジャンを?
何で?
フと、ジャンの顔を思い浮かべてみる。
人相が悪い顔立ち。
だけど瞳の奥は優しくて、唇は薄く……
柔らかく笑う。
少しだけ胸が暖かくなった。
『ごめん、私、あんまり好き…とか、そう言うの分かんない。』
穏やかになる気持ち。
それの意味が分からず、興味津々な顔で私を見ているハンナとミーナに対し、眉を下げて笑った。