第3章 また生きる事
[ミサキside]
教官室を出て、緊張から解放された私は一つ息を吐く。
理由は分からないけど、何のお咎めもなかった。
私は自由になりたくて死を選んだけど、この世界の人達は自由を手にする為に戦うのか………。
自由を手に入れたら、そこには何があるんだろう。
どんな物が見えるんだろう。
何を感じるんだろう。
私には、今まで自由なんてものは存在しなかった。
私は………
自由になりたい。
シャーディス教官との話しを思い出しながら、教官に教えて貰った兵舎へ向かう。
途中、食堂と見られるところを見付けると、夕食が終わったのか、人がポツポツと扉から出てきた。
もしかしたらジャンがいるかも知れない。
最後、教官の部屋から出て行った不安気な顔が頭をかすめる。
……ここまで連れて来てくれたし、教官室での出来事を知らせておこう。
食堂中へ入ろうと足を進めると、勢いよく飛び出してきた何かにぶつかった。
『いっ………た…。』
ぶつかったそれは胸元で、私より頭一つ高いであろう人物の顔を見ると、探していた本人が驚いた顔をして立っていた。
『あ……』
何て、間抜けな声を出すと心配そうな顔で「どうだった?」と聞かれる。
『あ……。うん、明日の適正試験に受かったら、極めて稀な例ではあるけど、一緒に訓練出来るようになるみたい。』
そう言うとジャンは溜め息を一つ吐いて「そりゃ良かった。」と笑顔を見せた。
ジャンのその柔らかい笑顔に気持ちが和らぐのは何故だろう。
何だか、今まで人に笑顔を向けられる事が少なかったから、照れ臭くなる。
そんな私の視界に坊主頭の男の子が入ってきて「あー!」と大きな声で、こちらを指差した。
「さっきの子!もしかして訓練兵!?ラッキー!俺はコニー・スプリンガー!」
そう言って手を差し出してくる彼。
握手?
え、と……
あまり慣れていないから状況が分からなかったけど、おずおずと手を握る私。
『私はミサキ サカシタ、よろしくね』
軽く解釈して、出来るだけ自然に笑った。