第3章 また生きる事
意味のない暴力に耐えていた記憶だけがある、悲しげに言う少女は今日訓練兵に来た者達と変わらない年頃だろう。
『私は自由になりたいです……。私に危害を加えようとする何かへの対抗の手段を知りたいです。』
……自由をなりたい、か。
サカシタの一つ一つの反応や発言にグリシャを重ねてしまう。
「選ばれた……人間。」
『??教官、なんと仰いましたか?』
「……いや、こっちの話しだ。」
呟くとまた再び沈黙が訪れる。
「上への報告はしないでおく。サカシタ、貴様の訓練兵入団を許可しよう。」
「はい。寛大なご理解と心遣いありがとうございました。」
椅子から立ち上がりサカシタを見ると、彼女は安堵した表情を見せ目を細めた。
「もぅ戻っていい。明日からは修練に励め。」
サカシタの背を軽く叩く。
『ありがとうございます。では失礼致します。』
そう言うとサカシタはドアノブを取り、兵舎へと向かって行った。
……グリシャ、お前はどこから来たんだ?
あの日、お前はあの場所で何をしていたんだ?
そして今、お前はどこに消えた……?
サカシタにしてもそうだ。
まさかまた、特別な人間という物がいたなんて……な。