第3章 また生きる事
単行本18巻ネタバレ有り
[シャーデスside]
紙幣や文字や文献を見せても、ミサキ・サカシタと名乗ったその少女は、知らない、分からないの一点張りだった。
まるで昔のグリシャを思い出す。
『つまり、この世界はマリア、ローゼ、シーナの壁で囲まれていて、壁の外には人の天敵とも言える[巨人]と言う生き物がうろついているわけですね。』
「あぁ、そして私は巨人がいる領域の探索や領地の拡大、市民を守る立場である、調査兵団の団長であった。」
『自由を手に入れる為に……市民に安全な暮らしがして欲しい、その為に外へ?』
「………そうだ。」
肯定するが、果たしてそうであっただろうか。
本当にそんな大それた事が言えるような人間であっただろうか。
私は、他の無能な人間とは違う。
昔はよくそんな事を思っていた。
私が団長にさえなれば、きっと違う結果が出せる……
そんな事を考えていた私の団長就任。
でも、私が残したのは、数多くの兵士の死と、次の団長の座を、優秀な選ばれし者へ継がせる事だけの結果でしかなかった。
『シャーディス教官。私は自分を守る術すら知りません。』
思考を遠くにやっていた私に、サカシタがポツリポツリと話し出す。