第1章 promise
俺のデスクに戻り、隣の席の椅子を引いた
「この机使って」
「はい、ありがとうございます」
ニコッと笑う顔も可愛らしい。
俺より背が高い櫻井、それでも可愛いと思ってしまう。
ニノにも可愛いという表現を使うけど、ニノとは種類が違う…
あいつの場合、可愛いのは見た目だけだから。
でも櫻井は違う。こいつは性格も可愛い…はず。
この一年間の営業で培われた人を見る目。
俺の目が間違ってなければ、櫻井の纏う柔らかなオーラは人の良さが滲み出ているものだ。
「大野さん?」
再び黙り込んだ俺の顔を覗き込む櫻井。
「うわっ!」
思わず後ろに飛び退いた。
「あっ、すみません、驚かせちゃいました?」
心配そうに俺を見つめる。
「ううん、大丈夫。俺こそボーッとしててごめん
何かあった?」
「いえ、ただ何から初めていいのか…」
そりゃそうだ。
丸っきりの初めてなのに、意識を飛ばして放置してしまった。
「もう少ししたら営業に出るから、これから行く得意先の資料見といてくれる?」
得意先の資料を取りだして渡した。
「はい、わかりました」
ニコッと笑い資料を受けとる櫻井。
その笑顔にまたドキッとした。
資料を読み出した櫻井を横目で見ると、さっきまでの可愛いらしい表情とは一転、キリッとした表情をして文字を目で追う。
その姿に目が釘付けになった…
人の目を引く人間は、何をしてても様になる。
そんな櫻井を見ている俺の心臓の音が、いつもより早く感じるのは気のせいだろうか…