第14章 For your happiness
コースメニューでオーダーしてまずはシャンパンで乾杯をする。
「誕生日おめでと」
「ありがと」
軽くグラスを合わせ口に運ぶ。
「うん、美味い!」
雅紀が笑顔を見せる。
「よかった、俺あんまお酒のことわからないから…でも前に来たときにこれ飲んで美味しいと思ったからこれにした」
「前に来たときって誰と来たの?」
「だから得意先の人だって」
「俺の知ってる人?」
「ん~、知ってるかなぁ?トキオ商事の長瀬さん」
「あのワイルド系の?」
「うん、そう…」
「ふたりきりで?」
「ふたりきりで」
「なんで?」
「なんでって、何度か誘われてあまり断るのも失礼だと思ったから行っただけだよ」
「…何度か誘われたんだ…それで?その後は?」
「その後って…」
「付き合ってって言われたんでしょ?」
「なんで知ってんだよ…」
「なんでって男相手に何度も誘うって相当興味がなければ誘わないよ?しかも誘いにのっちゃったんでしょ?向こうも期待しちゃったんじゃないの?」
「大丈夫だよ翔ちゃんじゃあるまいし…あっちがそういう目で見てたのはすぐに気が付いた、でも得意先の人だから下手に断れなくて、だからちゃんと会って断ろうと思ったんだよ」
「ふ~ん、気が付いてたんだ、で?ちゃんと断れたの?」
「断ったよ」
「納得してくれたの?」
「してくれたよ…」
「ほんとかなぁ~」
雅紀が疑いの目を向ける。
「してくれたってば、ちゃんと言ったもん…俺には今付き合ってる人がいるって…そしたら『なんだ、残念』って言ってそれからは誘われなくなった」
「ならいいんだけどさ、でも気をつけてよ?いい人だったから無事に済んだけど、悪い人相手じゃ襲われちゃうよ?今度そんなことあったら俺にちゃんと言ってね?」
「襲われるなんて…俺男だし…」
「関係ないよ、男狙いで来てるんだから『男だし』なんて理由にならないからね?」
「ははっ、心配性だな雅紀は…わかったよ、これからは気を付けるから」
「はぁ~そんな軽く言って…わかってないな、こういうことは身を持って経験しないとね」
「え?なに?」
「ん~ん、なんでもない」
雅紀がニコッと笑ったんだけど、また背筋がゾクッとしたのはなんでたろ?