第14章 For your happiness
指輪のつけられた左手と雅紀の右手を繋いで歩く。
自然と繋がれた手に視線が行ってしまう…なんだか不思議だな、こんなに小さな指輪なのに凄く大きな存在なんだ。
生まれてこの方アクセサリーなんてつけたことない…雅紀が言うように俺の趣味じゃないんだ…でも雅紀が『ほんとはね、こうやって和さんのことずっと腕の中に閉じ込めておきたいの…でもそんなこと出来ないでしょ?だからせめて和さんは俺のモノっていう証を贈りたかった』って言うから…そんな雅紀の想いが込められてるなら指輪も悪いもんじゃないなって思った。
閉園時間まで動物園の中を歩き回って外に出た。
「どうする?店予約した時間までまだ時間あるけど」
「え、予約したの?和さんが?」
雅紀が驚いて俺を見た。そりゃそうだろうな、外でふたりで食事することなんてほとんどないし、ましてや予約なんてしたことない…
でもさ、俺だって営業マンなんだからこの時期レストランが混んでることくらい知ってるよ。
「だってさ、外で食べよなんて言っておいて入れなかったら折角のお祝いが台無しじゃん」
「ありがと和さん…俺、生きてきた中で今日が一番幸せかも」
「だからお前は大袈裟なんだって」
「だって和さんが俺の為にこんなにしてくれるなんて思わなかったから」
「悪かったな…いつも何もしてやらなくて…」
「あ、変な意味に取らないでよ?和さんに何かして貰おうって思ってないから、和さんは和さんのままでいいんだよ?たださ俺の為に頑張ってくれてるの見るとやっぱ嬉しいよ」
「だから言っただろ?年に一日くらいお前の為に過ごしてやるよ…年一のことなんだからお前も遠慮せずに我がまま言っていいよ」
「いいの?やっぱりナシはナシね?」
「わかってるって」