第14章 For your happiness
電車の中ではふたり超至近距離で向かい合って立った。
基本いつでも俺を護るように立ってはくれるけど、こんなに近いことなんてなかった。手を伸ばせば抱き合える距離…いつもと違う距離感にちょっとドキドキする。
「和さん、熱い?」
「へ?なんで?」
突然の雅紀の質問に顔を上げると雅紀の手が俺の頬に触れた。
「顔、ちょっと紅いから」
「あ、うん、ちょっと熱いよな、電車の中…」
雅紀に指摘され恥ずかしくて誤魔化した。その瞬間電車が大きく揺れ雅紀の胸の中に飛び込んでしまった。
「うわっ!」
「大丈夫?和さん」
「う、ん…」
逞しい雅紀の胸板を感じながら耳元では雅紀の甘い声が聞こえる…ヤバい、更に俺の顔紅くなってるはず…でもこのままでいるわけいかないし…
ゆっくりと雅紀から離れ手で顔を扇ぐ。
「ほんと、熱いよなここ…」
言い訳染みたセリフを吐いてチラッと雅紀の顔を見ればニコニコ笑ってた。
「うん、そうだね」
絶対バレてる…俺の顔の紅い理由。余裕そうに笑う雅紀…こういうとき、雅紀の経験値の高さにちょっとへこむ。俺にはドキドキな体験でも雅紀にはそうじゃないんだよな…
電車を降りて動物園へ向かい歩き出すと雅紀がまた手を繋いできた。温かくて大きな手…この手はこれから先は俺だけのもの…そう願いを込めてぎゅっと握ったら、雅紀もぎゅっと握り返してくれた。ただそれだけのことなのに雅紀が『うん』って答えてくれたような気がして凄く安心した。
園内を見て歩いてると雅紀が看板を指差した。
「ねぇ和さん…小動物と触れあえるコーナーがあるよ?行ってみよ?」
「え~、俺触るのは無理かも」
「大丈夫だよ、犬は飼ったことあるんでしょ?犬より小さい動物だから」
「犬はおとなしいもん、俺噛まれるとか引っ掛かれるとか絶対やだよ?」
「そんなこと俺がさせないよ、和さんの体に傷なんてつけさせないから」
自信満々に言われ思わず胸がキュンとしてしまった。
実際無理だろうけどね、雅紀が反応するより動物の方が絶対動き早いよ。