第2章 友達と愛想。
「もう少しで体育祭です。各クラスごと、応援のコンセプトを決め、それに応じた仮装をして応援しなければならないそうなので、今から決めたいと思います。何か意見のある方は挙手してください」
いかにも真面目って感じの委員長さんが前に出て、私たちに意見を求める。応援のコンセプト、とか正直何でもいい。
「はいはいはいはーい!」
クラスにひとりは必ずいるであろう、お調子者の男子がうるさく手を挙げる。そんなにはいはい言わなくても、気づくっての。
「応援といえば、男子は学ランでしょ!そんでそんで、女子は彼シャツならぬ、彼ジャージ!そんで、スカートを短くして、ニーソ!からのネコ耳!!萌え要素いっぱいだぜっへっへっへ」
この意見にクラスが二つの違った声で溢れる。
女子からは、きもーい、さいてー、だとかいう不満の声。
一方男子からは、おおおおおお、きたきたきたぁああ!というやかましくて暑苦しい声。
私はもちろん、前者だ。
確かに何でもいいとは思ったが、それとこれとは話が違う……こともないけど、私は絶対にそんなの認めない。
「体育祭に萌え求めんな」
「じゃあ何に萌えろって言うんだよ!」
「何にも萌えなくていいし!ばっかじゃないの!」
「はあっ!?萌え求めなかったら何を求めるんだよ!」
「そんなの知るわけないじゃん!クラスの絆とか求めとけば!?」
男子VS女子の言い争いに終止符を打ったのは、担任の教師が手を合わせた音だった。
「みんな、一度落ち着くんだ」
落ち着いたエル先生の一声に、クラスが一気に静まり返る。
エルヴィン・スミス先生。
この高校の教師もまた、ほとんどが外国人なのだ。ヴィンという海外独特の発音はしにくいため、エル先生と呼んでいる。なぜかは分からないけど、この先生には歯向かわない方がいい、と頭の中で誰かが言うのだ。穏やかな顔とは裏腹に、まとうオーラには威圧感がたっぷりと含まれている。いや、威圧感で出来ていると言ってもいいだろう。たぶん、クラス全員が同じ考えだ。
「女子が怒るのも無理はない。動機が不純すぎる。だが、その他に意見が出ないのもまた事実」
さあどうする?と先生が私たちを見回す。
「……これで決定でいいですか?」
沈黙を破った委員長の声に、クラス皆が頷いた。