第2章 選ばれた精鋭
身に纏った彼の髪よりも青い色のユニフォームは代表の証。選ばれたものは選ばれなかったものの思いを背負う。発表された後に響木監督が言っていた言葉だがそれほどに代表という立場は責任が重い。でも彼はそれに選ばれた。
「でも全力で頑張るよ。世界一を目指さないとな」
「うん。私も全力で応援するから」
風丸の青い髪が風に揺れる。爽やかで前向きで頼もしいその姿に花織は胸を抑える。風丸をどうしてか直視できないような気がして少しだけ俯いた。彼が代表に選ばれたことは心の底から嬉しいのに、胸の中に何とも言えないよくわからない感情がある。嬉しいじゃないこの感情は一体何なんだろうか。
「花織」
彼の手が伸び、花織の身体を優しく抱き寄せる。花織は目を見開いた。心地よい彼の香りを身近に感じるのは、久しぶりだと思った。風丸の腕の中は温かく、心地よい。
「よっぽど心配させたみたいだな、すまない」
「え?」
「今日の花織、ずっと緊張してただろ。それに今も元気がないみたいだし……。疲れたんじゃないか?」
心配そうな声色が花織の耳元で囁く。彼はどうやら選考試合中の花織の様子もちゃんと見ていて、そのうえで今の花織がどこかいつもと違うことを感じ取っているらしい。花織は風丸の肩に顔を埋める。今の言いようのない心情は自分でも説明ができない。でも花織が今感じている気持ちの大部分は疲れなどではない。
「疲れてなんかないよ。……ただ一郎太くんの日本代表入りに安心しただけ」
花織は顔を上げて風丸を見つめる。端正な顔立ち、青い髪。大好きな人はちゃんと目の前にいる。
「そろそろ行こう。一郎太くんも私も家に荷物を取りに帰らないと」
「ああそっか……。そうだな」
抱き寄せる手が離れてもさりげなく手を取ってくれる。そんな些細なことに彼女は胸の中にある小さな何かが和らぐのを感じた。