第13章 ふたりの軌跡
ずっと堪えていた言葉が飛び出した。花織は息を飲む。もちろんウィンディの気持ちを知らなかったわけではない。散々、アレだけアプローチされればどれだけ花織が鈍くともウィンディが自分に抱いている感情は容易く察せた。
「俺なら、カオリを悲しませたりしない」
「ウィンディ……」
呟くように花織が彼の名前を囁く。彼の瞳はどこまでも純粋に花織を見つめていた。何の混じりけもなく花織を見つめて、真剣な言葉を告げる。だが、花織は目を伏せる。静かに彼から手を引いた。花織に彼の気持ちは受けられない。
「ごめんね、ウィンディ」
花織は彼の口づけを受けた右手を胸に抱いた。指先に触れる固い感覚。何も言わずにそれを確認する。そして花織は目を伏せたまま、静かな声できっぱりとウィンディに返答する。
「私には一郎太くんがいるから。……だからウィンディの気持ちは受け取れない」
さらさらと結い上げられた黒髪が揺れる。ウィンディは花織をじっと見ていた。だったらなぜ、そんな顔をするんだ。ウィンディは悔し気に眉を顰める。花織が好きだというならその表情の曇りはどんなに鈍感だって分かる。花織は今、悩んでいる。それもアイツのことで。花織を悩ませるヤツにみすみす花織を渡して引き下がれるだろうか、答えは否だ。
「俺は諦めない。……カオリ、お前は俺の運命の人だ」
「ウィンディ……」
「じゃあな、今日は帰る」
花織が引き留める間もなく、ウィンディは浜を走り去っていった。花織は強く胸のネックレスを握りしめて彼の背中を見つめる。その姿はとても花織が恋い慕う彼の姿にそっくりだった。