第12章 彼の秘密
「はあっ、一郎太くん……」
荒々しく呼吸をしながら花織が風丸を見上げる。風丸のキスによって蕩けてしまった身体は力など入らず、がさりと彼女の手から落ちたビニール袋が音を立てた。生理的な涙で潤み切った瞳、上気した白い頬、艶めかしい声で風丸を呼んで。そんな彼女に彼の勢いが止まるわけがない。
風丸は彼女の肌に触れる忌々しい存在をその手の中で握りつぶした。花織が身に纏う他の男の存在を感じさせるそれが途轍もなく憤ろしい。頭の中の自分によく似たあの男が優越感に笑うのが見えた。ジワリと滲むように怒りが身体に浸透していく。
「……っ」
風丸が首筋に顔を寄せればびくりと花織の身体が揺れる。すんと息を吸い込めば大好きな花織の匂いがした。だがそれに混じる知らない、おそらくあの男の匂い。花織を穢すあの男の痕跡。気が狂うほどにそれを不快に感じた。掻き消すように風丸はそのジャージが触れていた部分に唇を這わせ、舌を触れる。
「ひぅっ……」
花織はキスの余韻に溺れながら、首筋に伝う彼の感覚にゾクゾク、と身を震わせた。じんと下腹部に響く快感によって、ふやけてしまったような力でベッドのシーツを握る。花織が漏らした色を交えた吐息に風丸の方も益々夢中になった。ちゅ、と音を立てて彼女の柔らかい肌に吸い付き、熱い口づけを落とし、本能のままに、一杯まで引き上げられたうざったいその障害に手を掛ける。
花織はキスの余韻に酸素が足りず、頭が回っていなかった。だからその一瞬の判断に遅れてしまった。ことに気が付いて声を上げるもそれは手遅れであった。
「あっ……、ダメっ」
ジィィィ、とファスナーの前が明けられる音が静かな部屋に響き渡る。ファスナーが下ろされると同時に彼女に触れていたそれがはらりと彼女の肌を滑る。あっ、と花織が声を上げ、赤い頬を益々赤くして、力なく顔を隠した。直後風丸は硬直する。彼の目の前には彼の想像もしていないものがあった。