第12章 彼の秘密
「一郎太くん……」
「何だお前か、カオリを迎えに来たのか?」
さり気無くウィンディの褐色の手が花織の肩を抱き寄せた。風丸の眉間に刻まれた皺が一層深まる。ウィンディは口元ににやりと笑みを浮かべて風丸を見た。優越感を孕んだ笑顔だった。風丸は低い声でウィンディの問いに答えを返す。
「……ああ。お前、花織に変なことしてないだろうな」
「さあな。俺たちがどうしていようがお前には関係ないさ、なあ花織」
ウィンディがさら、とまだしっとりとしている彼女の黒髪に馴れ馴れしくも触れた。しかもその髪にキスを落としかねないような雰囲気だった。ウィンディ、と花織は少しだけ遠慮がちにウィンディを遠のけたが、風丸は目に見えてウィンディの行動に苛立ちを見せた。何気安く花織に触れているんだ。風丸は腹の底で押さえられないような黒い感情を吹きあがらせる。
一体お前は花織に何をした?花織も何でコイツのジャージを着ているんだ。風丸は苛立ちで沸騰しそうな頭で必死に思考を回そうとする、だが目の前に立つ男に対しての怒りが募るばかりで思考は働かない。もしかして……。風丸は一つの推測に行きつく。こいつが花織に何か破廉恥なことをしていたのだとしたら……。
風丸のイライラは最高潮だった。ウィンディを睨みつけ、つかつかと二人の間に割いるとぐいっと乱暴に花織の腕を引き寄せる。ぎゅう、と花織の腕を握る力の加減を考える余裕もなく風丸はウィンディを睨みつけた。
「花織をここまで送ってくれたことは礼を言う。だが、花織に妙なことをするのは許さない」
「俺が何をしようとお前には関係ねえよ」
ウィンディが傘を持つ手を持ち替えて不敵に笑う。その微笑は風丸にとって酷く挑発的だった。彼の怒りのボルテージを上げるには十分なほどの笑みだった。
「カオリ、じゃあまた一緒に走ろうな」