第11章 麗しの花嫁
「花織を頼むぞ。俺は春奈を助け出す。……本当ならどちらも俺の手で救い出したいが」
鬼道の手がぎゅうとこぶしを握った。身体は一つしかない。どちらかを選ぶとなれば鬼道は迷いなく春奈を取った。なぜなら花織には自分のほかにも彼女を守ろうと異常にいきり立つものが何人もいる。
「ああ、花織のことは任せてくれ。あんな奴に花織は渡さない。だから鬼道は音無を救うことだけを考えてくれ」
風丸と鬼道は視線を交わす。どちらともなくこぶしを差し出して互いに、こぶしをぶつけた。絶対にそれぞれ捕らわれた少女を助け出すという固い意志を目に宿し、彼らは手を腕を下す。風丸は天界へ、鬼道は魔界へ足を進める。
「風丸、ごめんな」
ヘブンズガーデンへ進む道を歩くさなか、リカが申し訳なさそうに風丸に声を掛けた。風丸はどうした、とリカを見る。リカは俯きいつもの元気もなく悔し気な顔をしている。
「ウチがあの腕輪を花織にあげたばっかりに……」
ずっと気にしていたのだろうか。風丸は目を少し見開く。だがこうなってしまったのはリカのせいではない。風丸は頼もしく、むしろ微笑んでリカの肩を叩いた。
「気にするな。……花織は俺が助けだす。だからリカも力を貸してくれ」
「風丸……」
リカが救われたような表情をして風丸を見つめる。そして張りつめてた緊張を少しだけ崩して口元を緩めた。責められても仕方がないと思っていた。何しろ風丸は花織をあんなにも大切にしているのだから、その彼女をみすみす危険にさらすようなことをしてしまったからこそ、彼の反応はずっと怖かった。
「むっちゃ、男前やなアンタ」
彼女が惚れこむのもわかるような気がした。何しろ彼は、こんなにも頼もしく微笑むのだから。