第11章 麗しの花嫁
「花織を放せ」
「フン、まだ邪魔をするというのか。愚か者よ」
もう一度少年が風丸にボールを蹴りつけようとする。だがそのボールの行く先は突如上がった春奈の悲鳴によって変えられた。ボールは風丸とは違う方向へ向かって飛んで行く。その先にはこれまた奇妙な衣装を身に纏った少年が春奈の前に立っていた。
「失せろ、ここはお前たちのような邪悪な者共の来る場所ではない」
いつの間にか風丸の前からいなくなっていた白い服を着た少年が、黒い服を着た少年に厳しい声で言う。二人は向き合って何やら言い合いをしているようだった。黒い服を着た少年が白い服を着た少年に指をさす。
「偉そうに言ってんじゃねえよ、お前こそ消えろ!世界は魔王と魔界軍団Zが支配するって決まってんだよ」
「笑止、世界をすべるは天の輝きのみ。天空の使途が今ここでお前を成敗してくれよう」
魔界と天界、ここにきてライオコット島に伝わる伝説で出てきたワードが二人の少年の口から飛び出す。その言葉を聞いてざわざわとジャパンの面々は口々に憶測を述べた。彼らは天使と悪魔だとでもいうのだろうか。風丸は衝撃の展開にいつの間にか立ち尽くしていた。
「きゃっ!」
黒い服をきた悪魔のような男が乱暴に春奈の肩を掴んだ。それと同時に風丸の背後から鬼道が走り出す。春奈の名を呼んで、男に突っ込んだ。だが今度は鬼道がボールに吹き飛ばされる。
「お兄ちゃん!!」
春奈が鬼道に駆け寄ろうとするが、悪魔のような男に腕を掴まれる。男はにやりと口元に笑みを浮かべて春奈を見つめた。男の目が怪しく紫色の光を放つ。
「お前は選ばれた、魔界にな」
その言葉と同時に一際大きな雷の光がフィールドを包んだ。風丸は眩しさに目を瞑って腕で光を遠ざける。光が書き消えたその時、男たちの姿も春奈とそして花織の姿もそこにはなかった。