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諸恋

第11章 麗しの花嫁




すうっと彼の右手が花織の頬を撫ぜる。彼の親指が花織の桜色の唇をなぞった。そのしぐさで花織は彼が何を求めているのかを察し、頬を赤らめる。風邪を引いている間、ずっと手を握ってもらってはいたけれど、それ以上のことはしていない。風丸も花織、ふたりとも、もっとお互いを求めあっていた。あれ以上触れられない期間があったから益々その欲求は大きい。

「その、私もしたいけど……。まだ治ったばかりだから……」

ごめんね、と花織が顔を真っ赤にして少し申し訳なさそうに微笑む。風丸はそうか、と残念そうな顔をしたが、自分の身を案じての彼女の言葉に素直に納得した。

「でも、花織が元気になってくれて本当によかったよ」

ぎゅっと風丸は花織を抱き寄せてそう囁く。花織は彼の胸に抱かれてドキドキとしながら風丸を見上げた。優しい頼もしい微笑みが自分を見つめている。何物からも自分を守ってくれそうな、そんな頼もしさで一杯の彼。こうしているだけで今までの不安すら溶けてなくなってしまうような。

「おーい、風丸ー!どこにいるんだー?」

びくっと風丸と花織は飛び上がらんほどに驚く。今のは円堂の声だろう。どうやら風丸を探しているようだ。そろそろ午前の練習も始まることだし、今日の練習メニューについて何か話しておかなければいけないことがあるのかもしれない。

「じゃあ花織、またあとでな。何かあったらすぐに俺や木野を頼るんだぞ」

ちゅっと軽く頬に口づけを落として風丸は花織から手を離す。花織は風丸の行動に少し驚いたが、それでも嬉しそうにクスクス、と笑って風丸に手を振った。

「いってらっしゃい。私も後でグラウンドに出るから」

ああ、と頷いて風丸もひらりと手を振る。とても甘く濃密な空気、朝から仲の良いふたりのひと時であった。
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