• テキストサイズ

諸恋

第9章 畏友




花織が彼の身体のことをしっかり尋ねようとするその前に、一之瀬が花織の肩を掴んだ。花織はじっと一之瀬に見据えられて口ごもる。彼は花織の瞳を覗き込んだ、変わらない芯の強い黒い瞳。

「また、浮かない目をしてるんだね。出会った時と一緒だ」
「え……?」

花織はきょとんとした顔をする。一之瀬は微笑んだ。恋に生きる人だ、この子は。でもだからこそとても真っすぐでいる。出会った頃と変わらない。

「俺は大丈夫だよ。諦めない限り、この状況がどうにかなると信じてる。だから花織も大丈夫だ」

出会った時と同じ言葉。一之瀬は目を伏せる。いったい何に悩んでいるのかは分からないが、今の一之瀬は花織とかつてのように一緒に悩むことはできない。自分で、彼らで解決しなければならないことだ。

「花織、俺は生きるよ」

一之瀬は宣言する。花織の肩からそっと手を離して左手の人差し指と中指をくっつけ敬礼のようにして振って見せる。

「生きて、キミと風丸の結婚式に参列するためにもね」
「一之瀬くんったら……」

彼の軽口に花織はほんのりと頬を染める。これだけ元気なら大丈夫だろう、一之瀬の手術はきっと成功するはずだ。そうであるようにと大切な友のためにただただ願った。
/ 366ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp