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諸恋

第1章 始まりの予感




木の葉が風に舞い上がる。その少女の駆ける姿はまるで風のように早く、そしてしなやかだ。少女は彼女にとって大事な人物と約束した場所へと急いでいた。約束していた時間を十数分過ぎてしまっている。知り合いに呼び止められてしまい、思いのほか時間を使ってしまったのだ。きっと彼はもうその場所で自分を待っていることだろう。

彼女の名前は月島花織。セミロングの艶やかな黒髪が特徴の雷門サッカー部のマネージャーだ。彼女が所属する雷門中学のサッカー部は今年のフットボールフロンティアという全国中学サッカー大会の優勝校だ。そして地球を救った地上最強のサッカーチームでもある。エイリア学園事件の解決により、チームが総理大臣から感謝状を貰ったのはまだ記憶に新しいことだといえるだろう。

世間を騒がせたあのエイリア学園の事件から既に3か月の時間が過ぎた。エイリア学園騒動の黒幕、吉良星二郎は逮捕され今は裁判を待っている状態だ。宇宙人を演じさせられていたお日様園の子供たちも雷門イレブンの前監督、吉良瞳子の元に保護された。破壊された学校も修復が進んでいる。すべては解決して平穏が戻りつつあった。一時は怪我をし、さらにはエイリア石の力に操られていた仲間たちも、今はサッカー三昧の生活に戻っている。

「一郎太くん!」

やっと河川敷に辿り着いた花織は大好きな青い髪の少年を見つけて表情を綻ばせた。彼女は立ち止まり、彼の名を呼ぶ。河川敷のサッカーグラウンドで彼女を待っていた少年も花織の姿を見つけて表情を緩めた。

「花織。遅かったな、何かあったのか?」

急いで河川敷の階段を駆け下りてきた花織に彼が声を掛けた。彼は風丸一郎太、この少女の恋人だった。彼は彼女が所属する雷門中学サッカー部のレギュラー選手だ。だが彼らふたりの出会いは、彼がサッカーに入るよりも前に遡る。

今年の四月に花織は帝国学園から雷門中学へ転校してきた。転校早々風丸と出会い、陸上を通してふたりは恋に落ちた。花織には当時、他に恋している男がいたが、風丸の一途な想いが彼女の心を揺り動かし、ふたりは時間をかけて親密な仲となった。ふたりは心の底から互いを想いあっていた。
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