第8章 遠ざかる光
はっきりと花織はそう言い切る。
「今日の一郎太くんはピッチに立つ選手として、やるべき役割を果たしてるよ」
あの時、風丸がアルゼンチンのフォワードを止めなければ、きっとイナズマジャパンはもう一点を失っていただろう。怪我をしてしまったのは結果論だ。医師の診察では2、3日も安静にすれば完治するだろうと言っていた。
「私は今日もカッコよかったと思うよ、一郎太くんのプレーを」
花織にとってどうあっても風丸は格好良いのだが。花織は風丸の足を撫でて心の底から今感じていることを呟く。
「怪我がこの程度で本当に良かった」
風丸が怪我をして立ち上がれなくなった時、一番取り乱していたのは花織だ。真っ先にベンチから立ち上がって風丸に駆け寄ったは良いものの、コールドスプレーも何も持ってきてはいなかった。酷く焦り、ただ風丸に対しての心配だけを持って彼に駆け寄ってきていたのを風丸は思い出す。それが風丸は内心かなり嬉しかった。
「花織……、ありがとう」
「ううん。……私は当然のことをしてるだけ」
風丸の足を撫でる手が一瞬止まる。風丸の感情とは裏腹に彼女はあの時の対応を逆に悔いていた。いくら焦っていたからと言って救急箱も何も持って行かずに怪我をした選手の元へ駆け寄るなんて。
「でも、もっと頑張るから。マネージャーとして……」
一郎太くんの彼女として、その言葉を飲み込んで花織は風丸を見つめた。風丸は前を見つめて直向きに見える彼女に微笑みかける。
「ああ。俺もこんな怪我、早く治すよ」