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諸恋

第7章 国を背負う選手




花織はヒロトの言葉に目を細めた。ヒロトはただひたすらに自分の言葉を続ける。

「あの事件があって、世間は父さんを悪魔のような人間だと言う」

あの事件の後、ヒロトの言う通り吉良星二郎は酷く世間にバッシングを受けた。それは吉良が自分が起こした事件の動機をヒロトたちを守るために世間に公表しなかったためだ。そのせいで様々な推測が飛び交い、デマが流れた。吉良に対しての同情の声は一切なく、身勝手に子供たちである彼らに対して吉良が強いた行動を批判する声が大きかった。まさに悪魔だと言われる声を花織もあの事件直後は多く聞いた。

吉良の葛藤も何も知らない評論家たちが、報道番組やお昼のワイドショーで勝手な推測をして吉良を批判した。

「……父さんは復讐に駆られていたあの時は、確かに俺たちのことを復讐の道具としてしか、見ていなかったのかもしれない。……それでも」

ヒロトは微笑む。幸せそうに、胸には父からの手紙を大事そうに抱いて。

「俺は父さんの息子になれて幸せなんだ」

ぽろぽろと涙をこぼしながらヒロトが呟く。黙って彼の話を聞いていた花織はそっとポケットからハンカチを取り出してヒロトに差し出した。そして彼の言葉に頷いてふわりと微笑む。

「いいお父さんなんだね。ヒロトさんのお父さんは」
「うん。……小さい頃はいつも俺たちを気にかけてくれて、来るときはいつも抱えきれないくらいのおもちゃを持ってきてくれたんだ」

ヒロトは花織の手からハンカチを受け取って涙をぬぐう。そして子供のように父親を自慢するような言葉を並べる。花織は微笑んでそれを聞き続ける。ヒロトは胸に手を当てて、息をついた。

「そして何より俺に、新しい居場所と名前をくれた」

ヒロトはにこりといつものような落ち着きを取り戻して、誇らしげに、花織に告げた。

「あの人は、俺の自慢の父さんなんだ」
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