第6章 男女の違い
「でも心配だよ、最近この辺不良がうろついてるって話だし……。それに今日の花織さん特に綺麗だから」
「えっ……」
吹雪の思わぬ言葉に花織の頬が桃色に染まる。それは決して茶化すようにではなく真剣な面持ちで告げられた。予想外のことに花織はたじろぐ。
「そ、そんなことないよ……」
「ううん、綺麗だよ。僕、今日の朝は見惚れちゃった。……髪型変えてるし、可愛いリップつけてるみたいだし。素敵だなあって」
素直な言葉で吹雪は花織を褒める。花織はかあっと頬を赤く染めて両手で自らの頬を包む。まさかこんな風に誰かに褒められるなんて思ってもみなかった。風丸に褒められたら良いな……、と考えてはいたがまさかそれ以外の人間に指摘されるとは夢にも思っていなかった。
「綺麗だよ、花織さん」
吹雪はニコニコと笑って花織に歩み寄る。そうっと白いその手を花織の肩にかけて、耳元で彼は甘い声で囁いた。
「……風丸くんなんてやめて、僕の彼女になってほしいなって思うくらい」
その囁き声、低めのトーンは紛れもなく冗談などではなかった。
「―――っ」
あまりの恥ずかしさに花織の白い頬はリンゴのように真っ赤になってしまった。花織は気恥ずかしさから吹雪から距離を取る。お世辞にしたって言いすぎだ、と花織は思った。恥ずかしすぎて吹雪の顔が見られないほどだった。
「……あ、あの、私急ぐから」
「あっ!花織さん!」
ぴゅうっと風のように彼女は走って吹雪の元から逃げ出してしまった。吹雪は引き留めようと手を伸ばしたが、彼女の方が素早かった。追いかけるのを諦めて吹雪は肩を竦めて息をつく。今の反応を見るに冗談だとは取られていないのだとは思うけれど、受け入れる気もないのだとわかった。
「風丸くんが羨ましいなあ……」
ぽつりと取り残された吹雪が呟く。見ていればわかる、あれは風丸のためのお洒落なのだと。
「……風丸くん、ちゃんと花織さんの事、褒めてあげたのかな」