第18章 甘夏の謌【幸村】
「いったい…」
勢いづいた幸村が更に文句を続けようとすると
「馬鹿幸村!!!!!」
美蘭が、声を上げた。
「…っ…はあ…?!!」
「わたしが…っ。どんな気持ちで待ってたと思うの!?」
目に涙を浮かべている癖に、凄い剣幕で叫ぶ美蘭に
「…!…んなの…知るか!おまえこそ、俺がどんな気持ちだったとか考えてねェだろ?帰って真っ直ぐ会いに行ってやったのに適当にあしらいやがってよ?!」
火に油を注ぐ幸村。
「行ってやったって何よ!偉そうに!」
「べつに偉そうになんかしてねー!」
もはや、売り言葉に買い言葉。
良くも悪くも喧嘩しなれた2人は勢いづいた。
「おまえが俺を待ってたようには見えなかったって言ってんだよ!夜行くって言ったのに謙信様に余計なこと言いやがるし!」
「…っ!…それは…っ。……だって…。」
「なんだよ。何かあんのかよ?」
「……っ。」
月のものが理由だなどと恥ずかしくて言いたくないと思い、他にそれらしい説明はできないものか、美蘭は考えた。
「久しぶりだから…わたしだってぎゅっ…て…して欲しかったけど。。昨日は…それ以上はしたくない気分だったの!…でも、夜会っちゃったら…幸村、絶対それ以上してきたでしょ…?だから…っ。」
言葉を選ぶものの、本当の理由を避けて説明するのは難しい。
「あ?!…んだよそれ!俺ばっかヤリたがってるみてェじゃねェかよ??!!!」
「…!違…っ。」
「違わねー!!!」
やはり、上手く伝わらなかった。
「違うの……っ。」
美蘭は、観念した。
「わたしが…我慢出来なくなるから…会いたくなかったの…。」
「あ??!」
「月のものなのに!我慢出来なくなっちゃうから…。幸村にそんなの…月のものなんて知られたくないし…っ。」
これ以上喧嘩をしたい訳ではない美蘭は、
意を決して、
恥ずかしさをこらえて
本当の理由を、伝えた。