第12章 恋知りの謌【謙信】湯治編 〜おしおき〜
「だが、椿の裸を見て思ったことがある。」
謙信の指で顎を上に向けられたまま、
美蘭の瞳は不安に揺れた。
「…何…ですか?」
「おまえを…こうしてやりたい、と思ったのだ。」
謙信はそう言うと同時に顎から指を外し、
美蘭の身体を支えるように背中に手を回すと、
「暫し我慢しろ。」
後ろにあった大きな岩の上に、優しく美蘭を横たえた。
「…っ…きゃ…?!」
美蘭は背中にヒヤリと感じた岩の冷たさに小さく声を上げた。
そんな美蘭の反応には構わず、謙信は美蘭の両足の付け根にヌルリと手のひらを滑らせ、前後に何度も往復させると、
「足を開け。」
色違いの瞳で上から美蘭の顔を覗き込むようにしながら言ったその一言は、あまりに予想外の言葉で、
「…足…を?!」
美蘭は思わず聞き返した。
「俺を疑ったおまえに、お仕置きだ。じっとしているのだぞ?」
そう言うと謙信は、
美蘭の両膝を押し開き、足の付け根に顔を沈ませた。
「……っ!」
それは、
謙信がいつも美蘭を快楽の世界に導いてくれる光景。
美蘭の身体は、無意識に謙信が自分の敏感な部分を弄ってくれることを期待して、身体を疼かせた。
だが
…ジョリ…。
「…??!」
下半身に感じたのは、待ち焦がれていた快楽ではなかった。
「謙信様?何を…??」
「動くな。剃毛だ。」
「…ていもう?!」
「下の毛を剃っている。椿の薄毛を見て…おまえのここも、毛がないほうが美しそうだと思ったのだ。」
それが、椿の裸に見入った唯一の理由であった。
「ええ??!」
まったく思いもよらぬ答えに美蘭は呆気にとられたが、
ほかの女に裸で迫られた瞬間、謙信が自分のことを思い浮かべていた事実を知り、
単純にとても嬉しくて胸がキュンとした。
美蘭は、
恥ずかしい気持ちに必死に耐えながら
おとなしく謙信に身を任せた。