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【YOI・男主&勇ヴィク】貴方の、『a』のみの愛。

第3章 『a』という名の、喜怒愛落。


【エピローグ】

ユーロ選手権終了後。
ヴィクトルは、今度はコーチとして四大陸選手権を控えた勇利に会うべく、再び日本へと向かった。
福岡国際空港で待ち合わせをしていたのだが、そこで思わぬ出迎えに遭遇する。
「お客様、この度は遠い所からようこそお越し下さいました。これよりわたくしがご案内させて頂きますので、こちらへどうぞ」
「そういう他人行儀な態度、怒られるよりよっぽど傷つくから止めてよ!」
「…怒られる事をしたという、自覚はおありなのですね?」

純から教わった「顔は笑ってるけど目は全然笑ってない笑顔」を作りながら、『ゆーとぴあ かつき』の旗を持った勇利に、ヴィクトルは泣きそうな程表情を歪めた。
「あのデコには、がなり立てるよりこっちの方が効果的や」と事前に純から言われていた通りの反応に直面した勇利は、つい表情筋が緩みそうになったが、努めて無表情を決め込むとヴィクトルの荷物を運びながら、駐車場まで移動する。
背後から感じるヴィクトルの物言いたげな視線にあえて気付かないふりをすると、勇利は荷物を車のトランクに収納してから彼を助手席に坐らせ、自分は運転席に乗り込んだ。
「あれ?勇利が運転するの?」
「わたくしがご案内させて頂くと、先程も申し上げましたが」
「謝るから機嫌直してよ。1日でも早く勇利に会いたくて、大会終わってから飛んで来たのに」
「──僕だって、会いたかったよ」
「え?」
ボソリと呟かれた言葉にヴィクトルが訊き返すも、勇利はそれには答えず車を発進させる。
車中が気まずい沈黙に包まれていたが、ふとヴィクトルの瞳に映った窓越しの夜景が、長谷津に向かうそれとは違和感があるのを覚えた。
「勇利、何だか道がいつもと違う気がするんだけど…」
「もう遅いし、今夜は福岡で1泊」
カーナビで市内のとあるシティホテルを表示しながら、勇利は左手でヴィクトルの太腿を軽く撫でる。
「…っ!?」
「家じゃ2人きりで出来る事が限られるし…言い訳は、そこでじっくり聞かせて貰うからね」
信号待ちで一瞬だけこちらに顔を向けた勇利の熱い眼差しと仄かに染まった頬を見て、ヴィクトルは己の鼓動が跳ね上がるのを覚えた。

やがて、ホテルの部屋になだれ込むように入った2人は、ベッドの上で『a』という母音の熱い睦言を、ひたすらに交わし合っていた。
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