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【ツキウタ】secrecy

第1章 secrecy


「こいっくマジ天使」
「まだ始まってないよ」
「始まりの始まりのこの時間がつらい」

 思考力と語彙力の低下がしばしばみられる友達は放っておく。今は友達の付き合いで『ツキラジ。』の生収録に来ているわけだが、だんだん知名度が上がっているのか、人が多い。ファンのガラス越しに駆くんと恋くんがスタッフさんと打ち合わせをしている。あ、終わった。

「全国の皆さん、お待たせしました!」
「生放送でお送りするツキウタラジオ、通称『ツキラジ。』のお時間がやってきましたよー!」

 漫才コンビの二人は今日も絶好調なようだ。「うちの子が息してる……」と横で友達が親の顔をしている。この子もう駄目だな。

「今日はな、な、なんと! シークレットゲストが来ているんです!」
「と、言ってもお馴染みの顔ですけどね! 我らがグラビの年中組、葵さんと新さんでーす!」
「こんにちは」
「やっほー」

 電撃ショックとはこのことか。昨日さっそく化学の教科書を忘れた新くんがガラス一枚越しにいらっしゃる。制服とコスチュームだと印象ちがうなあ、と思いつつ真顔でガッツポーズをした。はたから見たらきっと怪しい人だ。友達のことをとやかく言えたものじゃない。

「よかったじゃん! ナマ新!」
「おぉふ……」

 絶賛日本語不自由中である。最前列に行かなくてよかった。バレては次の日に気まずい思いをしてしまう。あ、でも友達の付き添いといえば逃げ場がなくもないないか。

「、この後に物販行くけど行く?」
「あー、今日はいいや。手持ちもそんなないし。ツキウサまんだけ買ってくる」
「私ピンク!」
「はいはい」

 言うまでもなく私はオレンジだ。CMが終わって四人が会話を始める。今回のお題は学校でドキドキしたこと、のようで新くんは「教科書忘れて隣の子に見せてもらった」と言った。忘れたやっばーかしてーと棒読みで頼んだ人の台詞とは思えない。ネタがなかっただけかな、とそれほど気にしなかったが、自分のことが話に出てきたとなるとやっぱり嬉しいものがある。普通のクラスメイトのふりをしていてもファンだなあと思った。
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