第12章 気持ち
「おい」
「あ、リナリーの所に行かなきゃ」
「お」
「アレンご飯食べよー!」
あれから数日、こうして何かと理由をつけて避けられていた。
原因は分かっている。あの日の事だろう。
「あんなと喧嘩でもしたの?」
「…チッ」
食堂で蕎麦を食べているとリナが声を掛けてきた。
この様子から恐らくあの事は知らないようだ。
「今度は何したの?早く仲直りしたら?」
「別に」
「まさか、あんなに手出したんじゃないでしょうね?」
いきなり確信を付かれ思わず体がビクッとなり食べていた手が止まる。
「え、やだ。まさか…本当なの?」
付き合ってられないと思った俺は立ち上がりその場を後にする。
が、しかし…
「ちょっと待って神田」
「なんだよ」
「ちゃんと説明して」
しつこく後ろをついて、絶対逃がさないと言わんばかりにこっちを見ていた。
この様子だと話すまでついて回るだろう。
観念した俺は仕方なくこの間の事を話すことにした。
「はぁ…なんでもっと素直になれないのかしら?」
リナリーが大きなため息をつく。
「要はそのウィルって人にヤキモチ焼いたんでしょ?」
図星だ。俺はあいつに嫉妬した。
いとも簡単にあいつに触れるのが気にくわなかった。
あの男があいつに気が好意があったのはすぐに分かった。
だが、それに気づかないあいつの鈍感さにも腹が立ったのだ。
「ちゃんと言葉にしないと伝わらないわよ?あんなったらこの手の事は鈍いんだから」
リナとも長い付き合いになる。
俺の気持ちなんてとっくに気付いていたのだろう。
だが、この気持ちを伝えるつもりなど無かった。
そもそもあいつは家族としか思ってない事など分かりきっていた。
「別に伝えるつもりはない」
「へぇ、いいの?とられちゃうよ?…ほら」
そう言ってリナが視線を向けた先には楽しそうに話をしているあんなと探索部隊の男の姿があった。