第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『恋愛終了で傷ついてるとこに
いきなり"バカ"は、ねぇだろ?』
『なにが"恋愛終了"だよ、
自分で望んでそうしたくせに。
落ち込んだ声出してる場合?
なんで綾さんとこ行かないのさ!』
…今日、彼女と別れたばっかりだぞ?
『そんな節操のないこと…』
『もうっ、
まっつんのそういうおりこうさんなとこ、
ホント、バカだと思うなっ!
もともとその恋に節操なんかないだろ?
今、行かないで、いつ行くのさ?
明日?来週?来月?
何もかも、どんどん過去になるんだよ?
1番、痛い時が、
1番、ムチャ出来るんじゃないの?』
そりゃ、そうかもしれないけど…
『でも、きっと、』
『なにさっ?』
『綾ちゃん、怒るって。
もう来るなって言われてるし、
彼女と別れたなんて言ったら、
"なんで大事にしないの?"って
それもきっと、怒るって。』
『ほんと、バカだね!
あんなに年上のレディだよ?
怒られるのを楽しむくらいじゃないと!
怒られて、落ちんでみせなよ。
そしたらその後、優しく慰めてくれるって。
そっから先こそ、
大人の女との楽しみじゃん!』
…ハイレベルな楽しみ方だな(苦笑)…
『でも…
流れに任せろ、
焦るな、って言ったの、お前だろ?
なのに、今、
俺が自分から動くのって、どうだよ?』
『あのさ、まっつん、』
俺らのキャプテンは、
バレーボールのことを口にするとき、
驚くほど、言葉に説得力を持つ。
それが、恋愛に関する、例え話でも。
『トスが、あがってんだよ?
自分で作り出したチャンスだろ?
ディグされたって、また繋げばいいじゃん。
目の前のボール、みすみす見逃す?』
『…これ、トスか?』
きっと、今、及川は、
電話の向こうで、ニヤリと笑ってる。
勝負を、心から楽しむ、あの顔で。
『トスだと思えば、
体は自然と動くんじゃない?
青城バレー部のMBだったならさっ。』
『…ん…。』
『もし、まっつんが攻撃しないなら、』
『?』
『俺がツーアタック、
決めに行っちゃうかもしんないけど?』
『?!』
『綾さんの家も知ってるしねぇ。』
『…ざけんな!』
『なら、自分で決めてきな。』
『…あぁ。』
『うまくいったらさ、
今度こそ、ぜひ、さんぴぃ…』
『しつこいな(笑)』
…感謝するよ、キャプテン。