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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)



『あたしね、ちょっと、疲れちゃった。』

『…そっか。』

『センパイの彼女、私じゃ、無理かも。』

『…』

『…焦ったり、引き留めたりしてくれないんだ。』

『ほんと、俺、余裕なくて、ごめんな。』

…情けない言い訳に聞こえるだろう、って
わかってる。

けど、

フラれるよりフる方が傷つかないだろ?
他の女が頭の中にいるから、なんてこと
知りたくないだろ?

『…受験、頑張って…下さい。』

言葉の最後が敬語になった瞬間に、
"終わったんだな"というのが、わかった。

『あぁ、ありがとう…ごめんな。』

『ん。』

小さく手を振ってくれた笑顔は
多分、涙をこらえた精一杯の笑顔。

俺も、黙って手を振った。

くるり、と振り向いて去っていく姿。
すぐそこの校舎のかどを曲がる頃には
小走りになってて、

ジャリ、ジャリ、と
彼女が踏みしめる足音を聞いていたら、

曲がってすぐ、
姿が見えなくなったと同時に
その足音は、止まる。

…なんで立ち止まった?
座り込んで泣いてる?

今さら俺が言うことなんかないけど、
それでも気になって、
腰をあげて様子を見に行こうとしたら

また、
ジャリ、ジャリ、と、
足音が、動き出した。

だけど、今度の足音は、
さっきと違って、二つ、重なってる。

…あぁ、そうか。
昨日の、あの、同級の男か。

きっとアイツに相談して、
きっとアイツに後押しされて、
彼女は勝負に出たんだな。

きっとアイツ、
校舎の陰で、今の話も全部聞いてて、
今頃、泣いてる彼女を慰めてる。

そしてきっとアイツら、
もうすぐ付き合い始めるんだろな。

一緒に登校したり下校したり、
ケンカしたり勉強したり、
友達カップルと一緒に遊びに行ったり
進路に悩んだり卒業式で泣いたり。

卒業までの1年間、
彼女が望んだ"高校生らしい想い出"を
作れるだろう。

…よかったな、って、思った。

俺とつきあってこんな別れ方したのは
悲しいことだったかもしれないけど、

俺とつきあってこんな別れ方したから
アイツの存在に気づいたんだもんな。

顔も知らないヤツだけど、
必ず俺より大事にしてくれるよ。


…幸せにな、って、
ヒトゴトみたいに思った俺は、
ロクデナシなんだろーか。

それより、
母の友達を好きになることの方が、
ずっと、ロクデナシ、なんだろーか。


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