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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




その日の昼飯時は、
お互いに妙なテンションだった。

俺は、
さっきのやりとりを見ていたことを
彼女に知られないように。

彼女は、
別の男に言い寄られたことなど
まるでなかったかのように。

はたから見たら
順調なカップルに見えるだろうけど、
俺たちはそれぞれ、
"普通"でいるために必死で、

その甲斐あって、
昼休みも無事?!に終わりそうな頃、
彼女が、言った。

『ね、センパイ、
勉強、忙しいのもわかるけど、
もうすぐ卒業しちゃうと思ったら、
私、今のうちに
いっぱい、思い出、作りたいなー。
もちょっと、一緒にいられないかな?』

まるで今、思い付いたみたいに、
さっき、あの男が言った言葉を。

『…んー。』

『センパイも、そうじゃない?
高校生活最後の想い出、作りたくない?
毎日一緒に帰るのは無理だとしても、
ほら、これからクリスマスもあるし、
あ、初詣で合格祈願も行きたいよね?ね?』

『だな。』

及川だったら、こんな時、
例え思ってなかったとしても、
キラキラの笑顔で、
相手の望む答えを言うんだろーか。

それとも、
うっすら希望を持たせつつ、
やんわり、断るんだろーか。

…どっちにしても
俺に、そんな器用なことは出来なくて。

中途半端な返事をする俺を
じっと見つめてる彼女の目。
黙っていることに耐えられなくて。

『わかった。』

そんな、
感情も愛情もない言葉を返した時、
昼休みの終わりを告げる余鈴が鳴る。

『…終わり、だね。』

『ん?』

終わり?

『昼休み。もっと一緒にいたいのに。』

一瞬、びっくりした。
終わり、って言葉。
俺達のつきあいのことかと思った。

『…あんまり一緒にいられなくて、
なんか、わりぃな。』

『ううん、大丈夫。』

…さっきの、あの
同級生のヤツの前にいる時より、
ずっと聞き分けのいい受け答え。

ホントはもっと
文句とか言いたいんだろーか…

『じゃぁね、センパイ、
また明日のお昼、一緒に食べようね!』

『あぁ。』

弁当箱を入れたちっちゃなバッグを持って
彼女が手を振りながら去っていく。

俺も手を振って
その後ろ姿を見送りながら、思った。

俺より"アイツ"とつきあった方が、
きっと毎日、楽しいはず。

…俺が彼女に別れを告げたら、
"アイツ"はちゃんと、
彼女のこと、慰めてくれるかな?


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