第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
パッとしない毎日を繰り返しながら
"本当に、何とかなるんだろーか?"
と思いつつ、
二週間ほどたった頃だった。
いつも通り、
昼飯を食べる待ち合わせ場所に行った。
いつもは彼女の方が先に着いてるのに
今日はまだ来てなくて、
"あれ?珍しいなぁ"と思って
校舎の角から向こう側を覗いたら、
ちょうど、彼女が歩いてきてた。
俺の方が先に到着なんて珍しいから
驚かせようと、壁の陰に隠れた時、
彼女を呼ぶ大声が近づいてきて、
…それが男の声だったから、
なんとなく
壁に隠れたまま様子を伺ってしまう。
彼女の名字を呼び捨てにしてるし、
彼女も彼を呼び捨てで返事してる、
ということは、
多分、クラスメイトなんだろう。
『なに?』
『…あのさ、俺、考えたんだけど、
この間お前、言ってたじゃん、ほら、
お前の彼氏のセンパイのこと、』
…俺のこと?
『煮え切らない、とか
避けられてる気がする、とか、
なんか隠し事されてる気がする、とか、』
『…やめてよ、ほんの愚痴だし。
先輩は受験生だから、いろいろ、
ナーバスな時期なの、きっと。
私が気を遣わなくちゃいけないのに
ちょっとあれこれ考えすぎただけ。』
…胸が、痛い。
そんな気を遣わせてたなんて。
『でもさ、もうすぐ卒業すんのに
彼女との時間を優先してくれないって、
やっぱ、ちょっとどーかと思うよ。』
『そんなこと、ないって。
今からだって、一緒にお弁当食べに…』
『それだって、お前、最近、あんま、
楽しそうじゃないじゃん。』
きっぱりと、そう言った、彼。
ぎくりとする、俺。
そして、一瞬、間をおいて、
いつになく強ばった声で答えた、彼女。
『なに、それ。楽しいよ?
楽しいに決まってるじゃん。
なんにも知らないくせに、何言ってんの?』
『…知ってるよ。』
『知らないでしょ!』
『…俺、いっつも、見てるからさ。』
『なにを?』
『お前のこと。
今日は楽しそうだなー、とか
いいことあったんだなー、とか
センパイとケンカしたのかなー、とか
…無理してんだろーな、とか。
ずっと、見てたから。』
話してる二人の、顔は、見えない。
だけど、俺は、
彼の声を聴くだけで、わかることがある。
…俺が、
綾ちゃんを必死で口説く時と同じ。
好きな女を口説く時の、
抑えきれない、気持ち。
