第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『…んなこと、ねぇし。』
『…ごめんなさい。』
『いや、俺も、なんか、ごめん。』
『ううん、私が変なこと言ったから…』
…
…
…
続かない、会話。
この、空気の気まずさといったら。
どーしたらいいんだ?
どーするべきなんだ?
俺は"とりあえず"優しくしてるのか?
確かに、泣かれるのはヤだけど。
今、何か言ったとしても、
それもやっぱり
"とりあえず"の優しさなのか?
…カチャン。
まだ、半分は手のついてない弁当箱を
彼女が閉めた音。
『あたし、教室、戻るね。
午後の授業の課題、まだ終わってなかった。』
…ウソだな、って思ったけど、
何も言えなかった。
俺だって、ウソ、ついたし。
彼女のこの小さなウソに比べたら、
俺のウソは、ずっとたちが悪い。
今さらのように、
夕べの自分の行動を反省する。
『…センパイ、勉強、頑張って。』
『あぁ。』
『じゃあね。』
先に立ち上がって俺の隣を離れてく。
その間際に見えた笑顔が、
全然、嬉しそうでも楽しそうでもなく、
今まで見たことないような
頑張って作った笑顔なのがわかって、
すごく、胸が痛かった。
結局、俺はそのままそこで
1人で弁当を食べて、
残りの昼休みも1人で過ごした。
午後の授業も
全然、身が入らなくて、
放課後も、
もし彼女が来たら
とりあえず何食わぬ顔をして
一緒に帰ろうと思ったのに
…来なくて。
じゃあ
俺から声かけに行くかといえば、
そんな勇気もなく、
結局、1人で帰る。
1人で帰るのなんて
別に全然、珍しくないし、
家に帰ってから1人なんて、
むしろ当たり前のことだし、
晩飯食う相手なら
それこそ、迷うほどいるし、
つまり
いつもと特に変わらないのに、
今日はとにかく1人でいるのが辛くて、
だけど、
気楽に誰かと話す気分にもなれなくて。
じゃあ、今、
誰になら心を明かせるかといえば、
それは、
悩みの中心である
綾ちゃんや彼女であるはずなく。
…こんな時、
最初に頭に思い浮かぶ顔といえば、
アイツ、しかいないわけで。