第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
…耳にあてたスマホから、
繰り返し、呼び出し音が響く。
怒ってっかな?
電話、出たくないくらい、
怒ってんのかな?
呼び出し音が途切れて、声が聞こえる。
『はぁい、』
出たっ!
『及川っ、あのさ…』
『こちら、及川トールでぇすっ。
人気者の及川さんは、只今、
ちょっといろいろ取り込み中につき、
電話に出られないんだよねっ。
レディのみんなは、かわいい声で
留守電にメッセをどうぞっ。
ヤローは、大事な用なら
またかけ直してきなよ。』
…留守電まで、チャラい。
完璧に、隙なく、すべてがチャラい(笑)
相談を諦めて通話を切ろうとした時、
『…あれあれ、切っちゃうわけ?』
声が、聞こえる。
ニヤリと笑ってる顔が
目に浮かぶような、声。
『…なんだ、いるならサッサと出ろよ。』
『何さ、その言い方。
俺は別に、まっつんに用はないし、
ケンカの続きの電話なら、切るよ?』
…待った、切られちゃ困る!
『いや、そんなつもりじゃねぇよ。
ちょっと、相談、のってくれ。』
『へぇ、相談相手、俺でいいわけ?
女たらしクソヤローが相手でいいんだ?』
…根にもってる(苦笑)
『ごめん、朝は確かに俺が言い過ぎた。』
『お?!えらく素直じゃん。』
『あぁ、間違ったことは言ってないけど
言い過ぎたのは謝る。』
『…なんか、謝り方、ビミョーじゃない?』
『謝ったから、いいだろ?』
『適当にごまかされてる気が…』
『気のせい、気のせい。
お前を信頼しての相談だから。
な、頼むよ、俺らの自慢のキャプテン!』
『…まぁ、他ならぬまっつんが
そこまで頭、さげるんならね…
あれ、ちゃんと頭、下げてる?
おでこ、床につけて土下座してる?
電話だから見えないだろう、とかって
無礼な姿勢、してない?』
『土下座してる、頭に血がのぼるくらい。』
してねぇけど(笑)
『じゃあ、許す。頭をあげな(笑)』
及川のこういうところが、好きだ。
ちゃんと、俺らのことをわかったうえで
自分のキャラを貫き通すところ。
本当は、すごく繊細で神経質なのに、
雑な態度でそれを隠してるところ。
卒業した後、岩泉がいないチームで、
コイツのことをコントロール出来るヤツ、
いるんだろうか?
…いやいや、それはまた、別の話。
『で、相談って?
ま、なんとなく予想はつくけどさ。』
