第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
…一瞬、意味が、わからなかった。
『じゃ、ま?』
『そう。どっちが邪魔なのかは、
俺の口から言わなくても、まっつん、
自分でわかってるだろーけど。』
じゃま、って、
"邪魔"のこと?
そう思った時には、
体が勝手に及川に殴りかかっていた。
『いい加減なこと、無責任に言うなよっ、
この、女タラシくそヤローっ!!』
『痛っ、やめなよっ、
もー、だから俺は言いたくなかったのに
まっつんが言えって言うからさぁ…』
ここは、朝の通学路。
俺達を囲んで、人だかりが出来る。
『きゃー、及川先輩がっ!』
『おーい、まつー、どしたー?』
聞こえる声が、全部、遠い。
その分、俺の頭の中では
"邪魔"という言葉が回っていた。
振り下ろそうとした手が、固まる。
『おい、朝からうっせーぞ、
マツがこんなに怒るなんて、
及川、どんなろくでもねぇことしたんだ?』
…人だかりを割って入ってきて、
俺の拳をつかんでいるのは、岩泉。
『岩ちゃんっ、助けてっ!』
『それはどー考えても、及川が悪い。』
『まだ、何も言ってないんだけどっ!』
『聞かなくてもわかる。
間違いなく、お前が悪い。』
『いや、だってまっつん、俺のこと、
"女タラシくそヤロー"って言うんだよ?!
ね、あんまりにもヒドくない?』
『そのまんまじゃねーか。
やっぱりマツは、悪くねぇ。』
『もぉっ、岩ちゃんのバカっ!』
『うるせぇ、女タラシくそヤロー。』
『ちょっと、岩ちゃんまでっ!!』
見慣れたコント?!が繰り広げられ、
『マツ、わりぃな。
とりあえず、コイツは俺が連れてくから
怒りが冷めてからゆっくり話し合え。
…あ、でももう部活も引退したし、別に、
無理して仲直りする必要もねぇか(笑)
ま、好きにしろや。じゃあな。』
岩泉は及川の耳を引っ張りながら
人だかりを抜けていく。
それにあわせて人垣も崩れ、
何もなかったように、
いつもの通学路の風景が動き出す。
…俺、以外は。
俺は、しばらく、動けなかった。
思ってもみなかったことを言われて
つい、柄にもなく逆上してしまったけど。
それは、
"本当に、邪魔じゃない"
…から腹がたったのか、
それとも、
"本当は、邪魔。"
…だから、腹が立ったのか。
どっちなのかを
自分の心に問いかけるのが怖い、
…ということは。
