第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
そんな話をしている間も
"及川君っ、おはよぉっ!"
"キャー、朝から及川先輩に会えたっ❤️"
…横を通る女の子達からは
黄色い声がたくさんかかって、
そして及川は
『おっはよ!
この間、試合の応援に来てくれてたよね、
そりゃ気付くさ、だってかわいいから❤️』
とか、
『おはよっ。あれ、前髪、切った?
すっごく似合ってる、かぁわいい!』
とか、
いちいち笑顔で手を振り、
こまめな対応を繰り返す。
『…お前、つくづくすげぇな。
彼女でもねぇ女子のこと、
いちいちそんなに覚えてるんだ?』
『俺、歴史とか元素記号とか公式とか、
そういうの覚える分の記憶力、
全部、バレーとか女の子のデータの記憶に
優先して使っちゃうみたいなんだよね。
これもある意味、スターの要素?』
言葉だけ聞いてると
とんでもねぇ勘違いヤローみたいだけど、
及川だと、確かにそうかもと思えるから
やっぱりコイツはすげぇ。
『…なぁ、お前が俺の立場だったら、どうする?』
『彼女と、綾さん?』
『うん。』
『そんなの、決まってるじゃ~ん。
どっちも遊びなら、
どっちとも程よくバランスとればいいし、
どっちも本気なら、
どっちにもバレないように全力で必死に
"君しかいない"的な態度とればいいし。』
そんな当たり前のことを、
当たり前に言われても。
『それが出来ないから、お前に頼ってんだろ…』
俺の言葉を想定していたように、
及川は意地悪そうな笑顔で答える。
…敵に回したくない、あの笑顔。
『なんで出来ないか、
まっつん、自分でわかってんじゃないの?』
『わかんねぇよ。』
『いやいや、わかってるって。
自分で、認めたくないだけだねっ。』
『なんだよ、
そんなもったいぶらねぇで、言えよ。』
『あ、ずるいなぁ。他人に言われたから
気付いたフリするつもりなんだ?』
『そんなんじゃねぇしっ!』
『痛っ!や、やめなよっ、もうっ、
最近のまっつん、岩ちゃん化しすぎっ!』
『じゃ、言えっ!』
『わかった、言う、言うからっ、
まず、離してくんない?!』
首から手を離すと、
ぜぇぜぇ息を切らしながら、
でもちっとも反省してない顔で、
『つまりさ、まっつん、』
及川は、恐ろしいことを、
さらっと、言う。
『どっちかのこと、邪魔なんだろ?』