第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『完全拒否、だったわけ?』
『いや、どっちかっていうと、
一応拒否、くらいの…』
及川がわざと忘れてくれた学生証を
俺が取りに行って、家にあがって、
雑談しながら抱き締めて。
『うんうん、予想通りの展開じゃん?』
『…下着、新しくてさ。』
『ワォ!』
『俺のためじゃないらしいけど。』
『え?綾さん、もう彼氏、いんの?』
『違う。自分のためだ、って。
女を忘れないように、って。』
『…いいなぁ、そういうの。
年上の強がりっていうか、
もつれたプライド、ほどいてあげたい!』
さすが及川、
高いハードルほど燃えるタイプ(笑)
だから、青城のキャプテンが務まるわけで
…つまり、俺とは、違うわけで。
『俺、お前と違うから、
うまく口説ききれなくてさ。
…強引に脱がせかけたら、スマホ鳴って。』
『マジ?まっつん、おバカ!
なんでマナーモードにしてなかったのさ?』
『ほんと、我ながらバカだと思うよ。
さすがに電話には出なかったんだけど、
すぐLINEが来て。』
『もしかして…』
『あぁ、彼女から。
別にフツーの内容だったんだけど
一瞬、罪悪感を感じてたら、
綾ちゃん、
俺の反応で彼女からって気付いてさ、
"もう、来るな"って 追い返された。』
"まっつん、ドジだねぇ"…的な
リアクションを想像していたけど、
『それ、俺もちょっとだけ悪かったかも。
ごめんね、まっつん。』
『あ?』
『俺が昨日、尾行したの、
まっつんの彼女からの依頼だったじゃん?
今頃、気にしてんだろーなぁ、と思って。
俺、家に帰ってから、ほら、
塾の前で撮ったアリバイ写真あるじゃん、
あれ送ってあげてさ、
"落ちこぼれまっつんは、
受験前になって急に焦って、
今、こっそり必死に勉強中。
だから応援してあげて❤️"って
LINEしたんだよね。』
…突っ込みどころ、満載。
『俺が落ちこぼれ?!
及川には言われたくねぇな。』
『いやいや、そこは演出の都合上さぁ…』
『ま、いいけど。…てか、お前ら、
LINEでやりとりしてんだ。』
『あ、そこ気にする?やだなぁ、別に、
個人的な話、するわけじゃないよ?
まっつんの相談窓口、みたいな感じ。』
『はぁっ?相談窓口、開設するほど
相談されてんのか?!』
…不思議と、腹は、たたなかった。
