第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
どんなに気持ちが重くても、朝は、来る。
いつも通り母さんに見送られて家を出た。
…まさか、
息子が自分の親友に迫った挙げ句、
店にも家にも出入り禁止をくらったなんて
想像もしていないだろう母の笑顔を
まっすぐに見られなかった。
駅から学校に続く道を歩いていると
ちょっと前に、人だかり。
中心にいるのは、間違いなく、及川。
今日も、青城はもちろん、
よその学校の女子からも
黄色い声をかけられてる。
そのひとつひとつに
キラキラした笑顔で
手を振り、返事する姿を
昨日までとは違った思いで見てた。
…あいつ、やっぱ、すげぇ。
あんだけ誰にでも平等に接するって、
(しかも、誰のことも本気にならないで)
彼女と綾ちゃん二人でも
既にどうしていいかわからない俺には、
到底、無理だ…
この際、師と仰いでみるか?
いや、シチュエーションが違いすぎて
参考にはならねぇか(苦笑)
そんなことを考えながら歩いていたら、
たまたま振り返った及川と目が合った。
女の子達の輪の中からひょいと抜け出し、
こっちへ走ってくる。
『やっほー、おっはよ、まっつん!
熟女とエロエロナイト、どうだった?
朝までコース?腰とか、大丈夫?
あ、もうまっつん、バレーしてないから
そんな心配せずにバコバコしていいのか!
ね、俺のおかげなんだからさ、そのうち
一回くらい、さんぴぃ、させてよ!』
…朝から、まあ次々と
エロいキーワードが浮かぶもんだ(笑)
これ、さんきゅ…と、
学生証を渡して並んで歩きながら
苦笑いで返事する。
『こんな小細工までしてもらったけど、
結局、未遂。』
『えっ、未遂?!なんで?
もしかして綾さん、生理中だった?』
『お前、妄想の方向、広げすぎ(笑)』
『だってほかにあり得ないじゃん!
年上キラーのまっつんと、
女盛りの体が疼いてる綾さん、
二人きりになっておきながら、
ヤらない理由、ある?!』
隣を通った女子が、
チラッとこっちを見た気がする。
『ちょ、及川、声、でかい…』
『あ、ごめんごめん、だってさぁ、
ちゃんと説明してもらわないと。
せっかくのキャプテンの小粋な配慮、
なんで無駄にすんのさ!』
…自分で言うか(笑)
でも、
話すなら、
及川しかいない。
自分一人で抱えるには、
モヤモヤも、限界だ。
