第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『…いっちゃん、お願い、
わかったから、離して。』
『無理だって、ほら、もう、』
綾ちゃんの手を掴んで、
俺の股間にもっていく。
ズボンを突き破りそうに勃起したモノ。
『こんなん、なってっから。
今さら、止められねぇよ。』
『うん、だから、私がシてあげるから。
いっちゃん、そこ座って、ね。』
…やっぱり、
俺から攻めるのはダメなのか?
『どーせヤるなら
どっちが何しようが一緒だろ?』
『一緒じゃ、ない。
私は、もう、失うものはないけど
いっちゃんは、
失っちゃいけないものばっかり。
…欲は解消してあげるから、
いっちゃんは、
私に言い寄られたことにしなさい。
いい?いっちゃんは、
色ボケしたおばちゃんに言い寄られて、
それを断りきれなかった、ってこと。』
『…綾ちゃんって、バカだ。』
バカだ。
男を、わかってない。
そうやって言われたら、
ますます、追いかけたくなる。
『俺が今、一番失いたくないのは、』
口をついて出た言葉。
自分で初めて自覚する。
『母さんより、彼女より、綾ちゃん。
いなくなってからずっと、
綾ちゃんのこと考えてた。
先週から今日までの1週間、俺、
綾ちゃんに会うために頑張った。
頼むから、俺を、拒否しないでよ。』
『…拒否なんか…
むしろ、
拒否出来ない自分が情けないくらい…』
苦しい、と思った。
誰かを好きになって、
苦しいと思ったのは初めてだ。
それなのに、止められなくて。
お互いにダメだって思ってるのに
それでも離れたくなくて。
苦しくて、苦しくて。
でも、
欲しくて、欲しくて。
前から何度も思った。
俺、綾ちゃんに、
なんもしてやれない。
だけど…というか、
だから…というか、
せめて、
綾ちゃんだけに
罪悪感を被せるようなことは、したくない。
今日は、俺に、悪者役、させて。
『綾ちゃんだって、この先ずっと
男ナシで生きてくなんて寂しいだろ?
次の男、見つけるまででいいから、
俺に、相手、させてよ。』
『…そんな、』
『俺がそれでいいって言ってんだから、
いいじゃん。お互い様だろ?』
『…いっちゃん、かのじ…』
ダメだってば!
"彼女"とか"浮気"とか。
それ、今、1番の禁句だから!