第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『狭いけど…どうぞ、あがって。』
『わーい、おっじゃまっしまぁ…』
『ちょ、待て!俺が先っ!』
これ以上、及川の自由にさせてたまるか。
ここは意地で及川を押し退け、
俺が先に綾ちゃんの家にあがる。
玄関は、
綾ちゃんのペタンコな靴、
俺のでっかいスニーカー、
そして及川のガチッとしたローファーで
いっぱいになった。
『で、及川…』
『わぁ、ここが綾さんの部屋かぁ。
へぇ、なんか昭和のドラマみたいな
ノスタルジックな感じがいい!』
『狭いし古くて、ごめんね。
畳にふすまの部屋なんて、
今時の高校生からしたら珍しいのかな?』
『イヤ、俺の部屋、和室だし、
それに俺、布団って結構、好きだな。
ベッドだとほら、すぐギシギシ言うし、
ちょっと派手に動いただけで、
上の棚の時計とか、おっこちてくるし…
まっつんとか、激しいのスキだから、
こっちの方が何かと都合いいよね?』
はっ?
ば、ばかっ、
『なんの話、してんだ、よっっ!』
『い、痛いっ、いったーいっ、まっつん、
ちょ、どーしたのさ、今日のまっつん、
ホントに岩ちゃんそっくりだよっ!』
後ろから及川の髪を引っ張って
首に腕を回して締め上げる。
マジで、自分が岩泉になった気がする…
暴れる及川をホールドしたまま、
綾ちゃんに問いかけた。
『で、綾ちゃん、
なんでコイツと一緒に帰ってきたわけ?』
俺と及川のドタバタしたやり取りを
笑って眺めていた綾ちゃんは、
買ってきたものを片付けながら言った。
『ご飯の準備してたらね、
マヨネーズが足りないかも、って思って。
すぐ帰るつもりで買い物に行ったの。
そしたら今日、特売日だったみたいで
ちょっと混んでたし、私も、お米とか
牛乳とか、ついあれこれ買っちゃって。
急いで帰ってきたらね、
アパートの前に、青城の制服が見えて、
てっきりいっちゃんだと思って声を…』
『それがコイツで?』
『んぐ、ほーいうほと…』
フガフガと頷いてる及川。
…まだ肝心な話は聞いてないから、
及川はそのまま捕獲しておいて、
『で?』
『ほら、及川君なら私も顔、知ってたし、
どーしたの?って聞いたら、
友達追いかけて来たのに見失った、って。』
…追いかけて?
いつから?どこから?何で?