第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
彼女をここに呼びたくない理由。
…すごく、居心地がいいから。
ワガママ言っても
甘えてもカッコつけてもダサくても、
全部、受け止めてもらえる場所。
1人で家にいる時より、
…正直、彼女と二人で過ごす時より、
ずっと、居心地がいいんだ。
『ねぇ綾ちゃん、
ガキな俺に、来週、絶対、
チーズインハンバーグ、食わせて。』
『もちろん。』
『1人で来てもいいよね?』
『うーん、まぁ、いいけど。
…彼女、大事にするならね。』
『する。』
『学校とか誰かとの約束とか入ったら、
ハンバーグよりそっちを優先するのよ?』
『わかった。』
『まっすぐ帰りなさいね。』
『うん、帰る。』
『…急に素直じゃない?
さっきのヤダヤダ君とは別人みたい。』
『うん(笑)』
『いっちゃん、やっぱ、かわいぃ(笑)』
『かわいくねぇし。』
『うぅん、かーわいい。』
…心が、くすぐったい。
かわいい、とか言われるの、
イヤなはずなのに。
なんか、
多分、照れてる顔をしてる自分が
猛烈に恥ずかしくて、
目の前の綾ちゃんのオデコに
キスをした。
『…?!ちょ、いっちゃん…』
『こんなんで、照れんの?
綾ちゃんこそ、かーわいい(笑)』
『もうっ、大人をからかわないで!』
かぁぁぁぁっ。(////ω////)
頬を赤くして、うつむいてる姿。
『からかってねぇよ。ホントだし。』
…ホントにかわいいって思ったんだから
しょーがねぇじゃん。
ちっちゃなアパートの狭い玄関先で、
俺、何やってんだ。(照)
でも、
今まで感じたことがないくらい、
すっげー、満ち足りた気持ちだった。
『じゃ。来週。』
『はーい。もう暗いよ、気を付けてね。』
『ん。』
…ホントはもう一回、キス、したかった。
でも、やめた。
このフワフワした感じ、壊したくない。
ドアを開けて、外に出る。
カチャン、と鍵がかかる音。
すっかり宵闇に包まれた景色。
階段を下り、
ふと綾ちゃんの部屋を見上げる。
蛍光灯の冷たい灯りが
カーテンの緑色を透かしてる。
…今頃、皿、洗ってんのかな?
俺のこと、考えてくれてっかな?
今の今まで幸せだったのに、
俺、もう、来週が待ち遠しくて、
気が遠くなりそうだよ、
綾ちゃん。