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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




心の距離が、掴めない。

近いような、
遠いような。

これがもし彼女だったら、
きっと迷わず、抱き締める。

『大丈夫、俺がいるじゃん。』とかいう
なんの根拠もない甘い言葉でも、
言えばきっと、彼女は安心する。

俺らは、
自分が1人じゃないって知ってるから。
学校に行けば友達がいっぱいいて、
家に帰れば、
うざいくらい(笑)気にかけてくれる
家族がいる。
未来を選べて、
そこにはたくさんの出会いがあることも。


だけど。
綾ちゃんは、そうじゃない。

自分で選んだ結果の、今。
弱音を吐けない、大人の辛さ。
根拠のない優しさは、虚しいということ。
それを全部、
"経験"として知ってるはずで。

それはわかる。
わかるのに、

一番肝心な、
どうしてあげたらいいか、が、
わからない。

どんなに威張ってみせたって
俺は、たいした不自由もなく
ぬくぬく育ってきた17歳のガキ。

言葉も、社会経験も、
たかがしれてる。

『…俺、なんか、出来ること、ある?』

結局、
こんな直球な質問をしてしまうんだ。

『…やっぱり、いっちゃんは優しいねぇ。』

綾ちゃんは、笑う。
いつも、こうやって、笑う。

穏やかに、ニッコリ、って。

いろんな思いをごちゃ混ぜにした、
大人の、笑顔。
そして、きっと言うんだ。

"大丈夫"って。

『あたしは、大人だから、大丈夫。』

…ほら、やっぱり。
俺じゃ、頼ってもらえるわけ、ない。

"高校生で、親友の息子"

NGワードの塊が、
綾ちゃんにとっての、俺。

悔しくて、むなしくて、
言葉が見つからなくて、
唇をぎゅっと噛み締めてたら、

言葉の続きが聞こえた。

『…って言いたいところだけど、』


??

『もし、いっちゃんに甘えていいなら、』

?!

『…時々、ご飯、食べに来て欲しいな。
モリモリ食べてる姿、見てると、
私まで元気になれちゃうもん。』

『…いいの?』

『…ときどき、母親づらさせて、っていう
私の自分勝手なお願い、聞いてくれる?』

『聞く、聞く!』

なんでもよかった。
むしろ、今、高校生の俺だからこそ
出来ることだし。

…そして、それがきっと、
母さんに対して、
俺も綾ちゃんも
罪悪感を感じずに済む、

ギリギリのラインだから。



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