第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『おーい、いっせい…』
うしろからおっちゃんの声。
今、ヘマしたら、完全にOUTだ。
とにかく乗り切らないと。
振り返り、買い物袋を見せる。
『わかってる、飲みもんも食いもんも
ちゃんとあるよ、ほら!』
…もちろんそもそも
そんな買い物、頼まれてないから
きっとおっちゃんは???な顔、
してるはずだけど。
そして彼女も、
納得してるようなしてないような
ビミョーな顔、してっけど。
『ってわけで、俺、今からあっちと合流。
まだ明るいし、ひとりで帰れるよな?』
『…うん。』
『駅、すぐそこな。
もうすぐ暗くなるから早く帰れよ。』
『…センパイは?帰らなくて大丈夫なの?』
『俺のことは心配いらねーよ。
じゃあな。気を付けて!』
彼女に手を振りながら
おっちゃんの方へ走る。
『ごめん、助かった。』
『おい、いっせい、突っ込みどころ満載だぞ?!
あれはお前の彼女?
放っておいていいのか?
そんで、このゴムはなんだ?
俺にこれをどーしろと?
もう、うちのかかぁとは、
ソッチはご無沙汰だぞ?』
笑うしかない。
『うん、もう、全部、気にしなくていいから。
んで、それ、おっちゃん、いらねぇだろ?』
ゴムの箱を奪い取る。
…すっかり時間を無駄にしてしまった。
『いっせい、お前まさか、
高校生にしてすでに二股?』
『ちがうし!』
…違う。
綾ちゃんとはつきあってねーから。
『おっちゃん、頼む、
何も聞かねぇでくんないかな?』
『いーや、聞かずにいられるか!』
『ごめん、まじで今日は勘弁!』
『…ま、男にはいろいろあるけどさ、』
『だろ?!俺、まさに今、その状態。』
『…男としては
お前の味方してやりてぇけど、
俺ら、お前の保護者でもあるからなぁ。』
出た。
ありがたいようなありがた迷惑のような
"外の家族"の包囲網。
『頼むよ、迷惑、かけねぇから!
…じゃあ。俺、急いでんだ。』
話してる時間ももったいなくて
立ち去ろうとした俺の襟元を
大人の男の力がぐっとつかむ。
『…いっせい、わかってるよな?
静ちゃんを悲しませるようなこと、
すんじゃねーぞ?』
…今、一番言われたくない言葉。
『わかってるよ!』
言われれば言われるほど、
邪魔されれば邪魔されるほど、
…綾ちゃんに、会いたくなる。