第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
この季節のこの時間。
日が暮れるのが早い。
影が長く伸び始め
夕暮れ感が強まり
通る人の数も増え
気のせいか、通る人がみんな、
こっちを見てるような気がする。
どーすんだ、この展開。
焦りと気まずさで、言葉が出ない。
『ホントに、女の人じゃない?』
『違うって。』
そう言うしかないんだけど、
ウソをついてる罪悪感は募るし、
時間はどんどん過ぎてくし、
もう、イライラ感が…
『…あたしも、行く。』
『は?』
『すぐ帰るから。』
『疑ってんの?』
『そうじゃないけど。』
『疑ってんじゃん。』
『だって、違うなら、平気でしょ?』
そりゃ、そうだけど。
…完全に、俺が劣性。
何も策は思い浮かばないけど
ひっこみもつかなくて、
『勝手にしろよ。』
半ばヤケクソで言い放ち、
振り返って先に歩き始めた。
どうすっか?
どこに行こうか。
無意識のうちに、
綾ちゃんのアパートとは反対側、
とりあえず、街の方に向かって歩く。
『ねぇ、こんなとこに友達いるの?』
『いるよ、いっぱい。』
『…高校生の友達?』
『いろいろ。』
そろそろ帰りの早いサラリーマンが
夜の街に足を運ぶ時間。
俺にとっては"庭"だけど、
日頃、夜の街に縁がない彼女は
きっと少しビビッてるはず。
このまま『帰る』って言い出せばいいのに…
そう思うのに、まだ、黙ってついてくる。
これ以上遅くなったら、
送って帰らなくちゃいけない雰囲気だ。
なんとか、言いくるめられないだろうか。
『あのさ、』
とりあえず言いかけた時、
『いっせい?』
俺を呼ぶ声が聞こえた。
『?!』
野太い、男の声。
振り返ると、外の家族の1人、
よく知ったおっちゃんだ。
飲みに出る途中なんだろう。
…助かった。
『ごめん、待たせた~。
頼まれたもん、買ってきたよ。』
キョトン、としてるおっちゃんに
問答無用で話しかける。
『こんなもん、俺に買わせるから
彼女に疑われて困ってんだけど。
な、コレ使うの、俺じゃないよな?』
ゴムの箱をヒュン、と投げる。
受け取ったおっちゃんは
箱を見てビビッてるだろうけど
その姿を見せないように
背中で隠して彼女に話しかけた。
『な、そういうことだから。』
『あの人…トモダチ?相当、年上…』
『友達。親の代からのトモダチ。』