第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
"K"の店休日が毎週水曜であることは
ネットで調べたらすぐにわかった。
…今日は水曜。
これはもう、チャンスでしかない。
行くなら、今日だろ。
学校からダッシュで帰り、制服を脱いで、
…一応、シャワーを浴びて…
私服で家を出る。
途中でドラッグストアに寄って、
どーでもいい飲み物やお菓子を
適当に買い物かごに入れながら、
ついでに、コンドームを一箱。
…別に、今日、使わなくてもさ、
彼女がいる男として、
持ってるのは当たり前だし。
毎回、及川頼みってわけにもいかないから。
そうやって自分に言い訳しながら
買い物を済ませ、電車に乗る。
この近くには学校はないし、
帰宅ラッシュにはまだ早い。
車内には
らくらく座れる程度しか人影はなく、
さらにこの駅は、
この時間、そんなに降りる人はいない。
だから、すぐ、気付いた。
少し離れたところからついてくる人影。
尾行にしてはあまりにも下手で。
駅を出てしばらく歩いても、やっぱりついてくる。
適当に角を曲がって身を隠すと
バタバタと慌てたように近づく足音。
…このまま隠れて放っておいてもいいけど、
もうすぐ日が暮れるから…
俺が隠れてる曲がり角を
バタバタと走って通りすぎる
制服姿の背中に声をかけた。
『…誰か探してんの?』
ギクッ、と立ち止まる背中。
『もしかして、俺?』
ゆっくり振り返る、彼女。
『…センパイ、』
『なに?』
『どこ行くの?』
当然、そう言われる流れなんだけど、
その先のことなんか考えてなかったから、
俺も中途半端なウソしかつけなくて。
『友達んとこ。』
硬い表情で、問いかけられる。
『それって、女の人?』
頭の中に、綾ちゃんの顔が
ボンっ、と、思い浮かんだ。
…それを悟られないように、
夕陽が眩しいようなフリをして顔をしかめる。
下手な芝居だってわかってる。
でも、絶対、これ以上、深入りさせない。
今日は俺にとって、勝負の夜なんだから。
『違う。』
『じゃ、なんでアレ…ゴム…買ってたの?』
…クソ。
まさか、あそこから見られてたのか。
『…頼まれたから。』
『ウソ。』
『ウソじゃねーし。』
『そんなの、人に頼む?』
『頼むんだよ、男は。』
『…』
彼女のことを、初めて
"うっとおしい"と思った。